遊説ゆうぜい)” の例文
四方を遊説ゆうぜいして、実践躬行じっせんきゅうこうを以て人を教え導いて、その徳に化せられるもの十余万人を数えるようになったということです。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
四日目、私は遊説ゆうぜいに出た。鉄格子と、金網かなあみと、それから、重い扉、開閉のたびごとに、がちん、がちん、とかぎの音。寝ずの番の看守、うろ、うろ。
HUMAN LOST (新字新仮名) / 太宰治(著)
私も中学に居る頃から其が面白くて、政党では自由党が大の贔負ひいきであったから、自由党の名士が遊説ゆうぜいに来れば、必ず其演説を聴きに行ったものだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
従来地方から上洛するものが堂上の公卿たちに遊説ゆうぜいする縁故をなした白河家と平田門人との結びつきが一層親密を加えたことは、その一つであった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
春秋以来、世には、説客という職能さえあって、一藩のうちには、遊説ゆうぜい向きの弁舌家が必ず幾人か抱えられている。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安政五年戊午ぼご 正月、大いに攘夷じょうい論を唱う。閣老掘田正篤まさひろ京都に遊説ゆうぜいす。三月、大詔たいしょう煥発かんぱつ。四月、井伊大老たいろうとなる。六月、勅許ちょっきょたずして、米国条約の調印をなす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ひそかに四方に遊説ゆうぜいして、一能あるものとは義を結び、父の手もとへ送りやり、ひそかに父が扶持ふちするもの、今日までに数十人、しかるに未だ一人として忍術の心得あるものなし。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
このひと覇気はきあるために長く宮中におられず、宮内を出ると民権自由を絶叫し、自由党にはいって女政治家となり、盛んに各地を遊説ゆうぜいし、チャーミングな姿体と、熱烈な男女同権
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
藤田東湖、藤森弘庵の二人は十一月徳川家定が将軍宣下せんげの式を行う時勅使の京都より下向げこうするを機とし、これより先に京師けいし縉紳公卿しんしんくぎょう遊説ゆうぜい攘夷じょういの勅旨を幕府に下さしめようとはかった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その中で予選に当ったのが、程鵬起ていほうきが海軍をして日本を襲う策と、沈惟敬ちんいけい遊説ゆうぜいをもって退かしめる計とである。前者は行われなかったが、海軍をもって日本を衝く説は良策であったに相違ない。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
諸国遊説ゆうぜいの間に、各地の産業を視察して来て、農事の改良方法を伝えたりなどするものですから、「女高山」という異名を以て知られるようになっている。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「公卿をつかわして諸侯を遊説ゆうぜいせしむべし」、曰く、「東叡山とうえいざん法親王を脱して仙台、米沢藩に託すべし」、曰く、「皇太子、親王、法親王はよろしく正議大諸侯に託すべし」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「父や弟の恨みをそそぐのが、なんでわが声望の失墜になるか、君は元来、逆境の頃の予を見捨てて走った男ではないか、人に向って遊説ゆうぜいして歩く資格があると思うのか」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友だちが京都へはいると間もなく深い関係を結んだという神祇職じんぎしょく白川資訓卿しらかわすけくにきょうとは、これまで多くの志士が縉紳しんしんへの遊説ゆうぜいの縁故をなした人で、その関係から長州藩、肥後藩
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
報国婦人団体が結成され、仏教婦人会の連絡をとり、籌子かずこ夫人について各地遊説ゆうぜいに、外の風にも吹かれることが多くなって、育ちゆく心はいつまでおかわいいおひいさまでいるであろうか。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「さよう、遊説ゆうぜいを致します」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
山崎流の学旨をはさんで、堂上どうじょう公卿くげ遊説ゆうぜいし、上は後桃園天皇を動かし奉り、下は市井しせいの豪富に結び、その隠謀暴露して、追放せられたるが如き、もしくは明和四年、王政復古、政権統一
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
平田篤胤あつたね没後の門人らは、しきりに実行を思うころであった。伊那いなの谷の方のだれ彼は白河しらかわ家を足だまりにして、京都の公卿くげたちの間に遊説ゆうぜいを思い立つものがある。すでに出発したものもある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それから各自になるべくその主張するところに多くの賛成者を求めようとして、雑談の間に遊説ゆうぜいを試みているのもありました。それで夜の更けると共に、席はいよいよ興が乗ってゆくばかりです。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「一山の人に話したい」と、熱心に、遊説ゆうぜいして廻った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)