にが)” の例文
ところが、今朝家人がえさを取り替える際に、ちょっとの不注意で、せっかくのこの楽しみを再び空ににがしてしまった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あはれ、殊勝な法師や、捨身しゃしん水行すいぎょうしゅすると思へば、あし折伏おれふ枯草かれくさの中にかご一個ひとつ差置さしおいた。が、こいにがしたびくでもなく、草をしろでもない。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
折からまた、夏侯惇かこうじゅんその他、曹操幕下の勇将が六人もここへ集まった。——今こそ呂布をにがすなとばかりにである。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半四郎は振拂ひゆかんとすれば雲助共は追取卷おつとりまきどつこいにがして成ものか此小童このこわつぱめどうするか見ろいのちをしくば酒代さかてを置て行とふところへ手を入れければもう勘忍かんにんはならずと半四郎は其腕を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「今度こそはにがしつこはねえ。路地の中を一軒殘らず洗つて行くのだ」
重「人知れぬ処へ行って両人りょうにんとも討果すからたもとを押えてにがさぬように」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……客に接しては、草履を穿かない素足は、水のように、段の中途でもう消える。……宵にはぜを釣落した苦き経験のある男が、今度はすずきを水際でにがした。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「綺麗な鳥よ、綺麗ジャノー。」「にがしちゃいやでございますよ。」「ニガスモンカ。」早く殺さないと肉が落ちると云うので要太郎が鳥の脇腹をつまむと首がぐたりとなった。もろいもので。
鴫つき (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
お録、下枝をどこへにがした。と睨附ねめつくれば、老婆は驚きたる顔を上げ、「へい、下枝さんがどうかなさいましたか、「しらばくれるない。きっときさまにがしたんだ。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立塞たちふさがるように、しかも、にがすまいとするように、かまち一杯にはだかるのである。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にがすなよ。」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にがすな。」
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)