越路こしぢ)” の例文
いろひ、またゆき越路こしぢゆきほどに、られたとまを意味いみではないので——これ後言くりごとであつたのです。……不具かたはだとふのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
越中守として踏み歩いた越路こしぢの泥のかたが、まだ行縢むかばきから落ちきらぬ内に、彼にはもうまた、都を離れなければならぬ時の迫つて居るやうな気がしてならない。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
彼等めうとに親しみむつぶものなく、ある年、冬の末つかた、荒栲は織上げしちぢみを山の一つあなたなる里に持行き売らんとするに、越路こしぢの空の習ひにて、まなくときなく降る雪の
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかるに越路こしぢの雪をこと作意つくるゆゑたがふ事ありて、我国の心にはわらふべきがおほし。
信濃川踏むべからざる大道を越路こしぢの原の白雪に置く
二人の女歌人 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
越路こしぢの「山科やましな」11・13(夕)
越路こしぢのはてのさくら花
故郷の花 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
ふゆの、山國やまぐにの、にしおふ越路こしぢなり、其日そのひそらくもりたれば、やうやまちをはづれると、九頭龍川くづりうがは川面かはづらに、夕暮ゆふぐれいろめて、くらくなりゆく水蒼みづあをく、早瀬はやせみだれておと
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
雪竿といへば越後のこととして俳句はいくにも見えたれど、此国に於て高田の外无用むようの雪竿さをたつところ昔はしらず今はなし。風雅ふうがをもつて我国にあそぶ人、雪中をさけて三ころ此地をふむゆゑ、越路こしぢの雪をしらず。