諜者ちょうじゃ)” の例文
そこは、他国の使臣や、諸方に放ってある諜者ちょうじゃなどが、よく迎えられるところで、本丸やこの曲輪くるわとも絶縁された一秘閣ひかくであった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この間も、博物標本室の、ぞう剥製はくせい標本の中から、のこのこと出て来た諜者ちょうじゃがいたからね、わしの教室だって、決して安全な場所ではないんだ
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
平次の見込み通り、徳太郎は三河町みかわちょうの叔父の家で、剣術ごっこをして遊んでいるところを、ガラッ八とそのまた手下の諜者ちょうじゃ発見みつけられたのです。
かねて謀計はかりごと喋合しめしあわせた、同じく晩方げる、と見せた、学校の訓導と、その筋の諜者ちょうじゃを勤むる、狐店きつねみせの親方を誘うて、この三人、十分に支度をした。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はい、麻売り商人だと申して、数日まえからこの街道をうろうろしておりましたが春日山のお城の模様などをたずねまわるのがてっきり諜者ちょうじゃとにらみましたので」
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「むこうが中間、小者なら、こちらは、同心、加役かやく。……定廻り、隠密、無足むそく諜者ちょうじゃ。……下ッ引まであわせると五百二十人。藤波は、死んでしまったわけじゃございません」
おっと、また、諜者ちょうじゃの奴が、出て来たぞ。今度は何をいやがるのか?
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
彼は部下の諜者ちょうじゃから、この企てを聞き知った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
神通川方面から戻った諜者ちょうじゃのはなしによると、佐々の家中では、先頃、筑前が云い触れさせた——能登の七尾港より軍船百艘を仕立てて
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐさまけつけてくれた専門家の説明によって、一切は明らかになった。帆村を欺したのは、たしかに例の秘密団体の諜者ちょうじゃたちであったのだ。
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
顔の良い兼吉は、即座に子分や諜者ちょうじゃを呼びました。一刻も経たないうちに、近江屋の庭に集まった人数はざっと三十人。
一ノ関は要所へ諜者ちょうじゃを配っている。涌谷や松山や自分の身辺は、特にきびしく監視されていた。
「こりゃ、そちは幻術げんじゅつをやるだろうが、諜者ちょうじゃはから下手べたじゃの。さぐりにかけては、まだそこにいる男のほうがはるかにうまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お菊の言葉や、父上市太郎様の最期の様子、奥方のお言葉の端々からそれくらいのことは察しました。それに駒形のお屋敷には一昨夜から、三人の諜者ちょうじゃ
諜者ちょうじゃは一人ばかしじゃないさ、が、まあそんなことはいいとして、その女主人の素性というものがわからない、江戸の者でないことは間違いないし、町人や農家の者でもない
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
国際関係のものは勿論のこと、営利専門のものもあるし、情報通信のもの、経済関係のものなどと、ずいぶんいろいろの諜者ちょうじゃが活躍をしていた。時には同士討どうしうちもあって面白いこともあった。
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
脅しでない。腰のものにかけて申す。老体は隠者めかしてとぼけているが、じつは諜者ちょうじゃをつかって、寄手のうごきをさぐり、ひそかに千早の正成を
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
琥珀こはくさかずきを手からおとし、さらに、諜者ちょうじゃのさぐってきたちくいち——伊那丸いなまる咲耶子さくやこのうごきを聞くにおよんで、その顔色はいちだんと恐怖的きょうふてきになった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一ぽう、山大名の呂宋兵衛は裾野すそのへかくれた咲耶子の行動にゆだんせず、毎日十数人の諜者ちょうじゃをはなっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実をいえば、その附近へ逃げこんだに違いないその傷負ておいというのは、裏方とはご縁の浅くない吉水禅房の末輩で、法然房が叡山へ諜者ちょうじゃに放った人間なのじゃ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それ見ろ、あまねく諸国をめぐる六部なら、肩に笈摺おいずるの痕が見えぬ筈はない。ははあ読めた。うぬは亀岡藩の諜者ちょうじゃだな。仮面めんを脱げッ、この馬鹿野郎めが!」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
阿波守は、一八郎を血祭りにすると称して、思う壺に女中の中から諜者ちょうじゃを見出した満足ににっことして
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そちの母は、仏者のことゆえ、諸院と往来あるは当りまえじゃが、信長をのろう門徒の諜者ちょうじゃなどにたばかられぬよう……女じゃ、そちからそっと折を見ていましめておいたがよいぞ」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その前に「関東の諜者ちょうじゃ」という疑惑の下に、九度山衆の手であやめられてしまえば、これはもはや救いも交渉の余地もないことだが、聡明なる幸村ゆきむら父子の目にとまれば、そんな嫌疑は
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ひと眼でも知れている敵の諜者ちょうじゃ詭弁きべんに、すぐに動かされるような領民では」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、また、半刻もたつと、青塚方面から帰って来た諜者ちょうじゃの服部平六が
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新城の諜者ちょうじゃは、各地で耳へ入れてきた情報を、いちいち孟達へ報じていた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
味方の諜者ちょうじゃが、苦心して写しとって来た甲府の躑躅つつじヶ崎の絵図面である。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
察するところ、この水汲男みずくみおとこは、唖を装って住み込んでいた「山の会堂」の諜者ちょうじゃであったのではないだろうか。どうも彼の走って行く道が、例の天童谷てんどうだにの方角へ向っているような気がされてなりません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉は、諜者ちょうじゃを放って、城中の尼子一族を、こう励ました。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明が、何故の敵の歓呼かと老練な諜者ちょうじゃに調べさせると
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、心ひそかに秘策をえがき、なお敏捷な諜者ちょうじゃを放って
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そのような諜者ちょうじゃがそれがしをけておりましょうか」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「美濃の諜者ちょうじゃが一と長屋に住んでいたのか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諜者ちょうじゃの眼も、それぞれに違っているのだ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「六波羅の諜者ちょうじゃだな」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)