角店かどみせ)” の例文
元園町もとぞのちょう一丁目十九番地の角店かどみせで、その地続きが元は徳川幕府の薬園、後には調練場となっていたので、若い侍などが大勢集って来る。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
綿文は角店かどみせで、土蔵が二戸前。二階造りの店とはべつに、中庭を隔てて、平屋建ての住居があった。住居のほうは横に門があり、正面が玄関。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
透谷の家というのは、銀座通りよりもむしろ数奇屋河岸すきやがしの方に近よっていたかと思う。河岸から来れば左側の小さな角店かどみせで、煙草をひさいでいた。
それで旧両国広小路の軒並みは、角店かどみせのぼくの家から鍵なりに、通りを煙草屋、玩具屋、そば屋の長寿庵、足袋商の海老屋……と順になつてゐます。
私のこと (新字旧仮名) / 木村荘八(著)
さてこの世辞屋せじや角店かどみせにして横手よこてはう板塀いたべいいたし、赤松あかまつのヒヨロに紅葉もみぢ植込うゑこみ、石燈籠いしどうろうあたまが少し見えるとこしらへにして、其此方そのこなた暖簾のれんこれくゞつてなか這入はいると
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あそこの大きな角店かどみせと、盛り場一帯の縄張りを、施恩から奪い取っていたからこそ、その顔で日々莫大ばくだいな日銭もあがり、その悪銭の何割かが軍閥ぐんばつ一家の張家の内ぶところへも
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
階下は全部漆喰しっくいで商売に使うから、寝泊ねとまりするところは二階の四畳半一間あるきり、おまけに頭がつかえるほど天井が低く陰気臭いんきくさかったが、くるわき帰りで人通りも多く、それに角店かどみせ
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「藁店の角店かどみせで小間物屋ですから、すぐにわかります」と、僧が教へた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
さっきの酒店は角店かどみせで、外見や格式が他の大抵の店よりも立派であった。
薄暗うすぐら角店かどみせ二重にぢゆうこしかけて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
元園町一丁目十九番地の角店かどみせで、その地続きが元は徳川幕府の薬園、後には調練場となっていたので、若い侍などが大勢おおぜい集まって来る。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
路次の角店かどみせ——一度はめた例の肉屋をまた開業して——石秀せきしゅうはもうくだらないムシャクシャなどは、努めて忘れようとするものか、今日は早くから店頭に顔を見せ、客へもお世辞をふりいていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平「エヽ角海老てえ女郎屋じょうろやは京町の角店かどみせで立派なもんです」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんの意味か「大熊」と看板に書いてある角店かどみせの前に立って
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの広場の道をはすかいに抜けた所の大通りの角店かどみせですが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)