観音くわんおん)” の例文
旧字:觀音
がくだアな、此方こつちへおで、こゝで抹香まつかうあげるんだ、これがおだうだよ。梅「へえゝこれ観音くわんおんさまで……これはなんで。近「お賽銭箱さいせんばこだ。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
極楽寺ごくがくじ光緒くわうしよ十二年に建てた支那の寺院で、山層を利用して幾段にも堂舎をき上げ、巨額の建築費を要したものだけに規模は大きいが、中に安置した釈迦、観音くわんおん
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
観音くわんおんさまのいちだわね。今夜こんや一所いつしよに行かなくつて。あたい今夜こんやとまつてツてもいゝんだから。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
わが吉利支丹キリシタンの徒の事蹟をせるを以て、所謂いはゆる「南蛮もの」を蔵すること多からんと思ふ人々もなきにあらざれども、われは数冊の古書のほかに一体のマリア観音くわんおんを蔵するに過ぎず。
わが家の古玩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
仏壇に立つ観音くわんおんの彫像は慈悲といふよりはむしろ沈黙の化身けしんのやうに輝いた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なアにさ、ここが観音くわんおん仲見世なかみせだ。梅「なにかゞございませう玩具店おもちやみせが。近「べた玩具店おもちやみせだ。梅「どれが……。近「あの種々いろんなものを玩具おもちやふのだ。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
四日目の朝いつものやうに七時前にうちを出て観音くわんおん境内けいだいまで歩いて来たが、長吉ちやうきちはまるで疲れきつた旅人たびびと路傍みちばたの石にこしをかけるやうに、本堂の横手よこてのベンチの上にこしおろした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
南無大慈大悲なむだいじだいひ観世音菩薩くわんぜおんぼさつ……いやアおほきなもんですな、人が盲目めくらだと思つてだますんです、浅草あさくさ観音くわんおんさまは一すんだつて、虚言うそばツかり、おほきなもんですな。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
これから先の一年/\は自分の身にいかなる新しい苦痛をさづけるのであらう。長吉ちやうきち今年ことしの十二月ほど日数ひかずの早くたつのを悲しく思つた事はない。観音くわんおん境内けいだいにはもうとしいちが立つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)