西京さいきょう)” の例文
そうかとおもうと、いま西京さいきょうでは、こういう着物きものがらがはやるとか、東京とうきょうひとは、こういうしなこのむとか、そういうようなはなしっていました。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
即ち四季の変化は何人なんぴとくこれを知るといへども、東京の名所は西京さいきょうの人これを知らざる者多く、西京の名所は東京の人これを知らざる者多きが如きなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
お登和も張合ありて心嬉く「このお皿のは昨日きのう奥さんにお話し申した西京さいきょうのお多福豆です。三日前からかかって今日やっと出来上りましたから一つ召上って下さい」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
十日ほどして、磯五からのがれるために、おせい様は西京さいきょうのほうへ旅をすることになった。気候はよし、東海道の宿々をつぎつぎに下って行くのも、一興でないことはなかった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ひるすぎになって、西京さいきょう大家たいか大坪道禅おおつぼどうぜん馬術ばじゅつ母衣流ほろながしの見ごとなしきをはじめとし、一門の騎士きしあぶみをならしてをあらそい、ほかに剣道組けんどうぐみから数番の手合てあわせが開始されたが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
極込細工きめこみざいくじょううばや、西京さいきょう芥子けし人形、伏見人形、伊豆蔵いずくら人形などを二人のまわりへ綺麗に列べ、さま/″\の男女の姿をした首人形を二畳程の畳の目へ数知れず挿し込んで見せた。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
江戸は徳川氏三百年の城下町であり、西京さいきょうに対して新しいみやこでありました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
上京の途中は大阪の知人をたずね、西京さいきょう見物に日をついやし、神戸よりは船に打ち乗りて、両親および兄弟両夫婦および東京より迎えに行きたる妾と弟の子の乳母うばと都合八人いずれも打ち興じつつ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
この中には西京さいきょうの松茸も少しばかり混っていますが大概は江州ごうしゅうから美濃みの辺の松茸のようです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
彼女は西京さいきょうの生れにて、相当の家に成長せしかど、如何いかなる因縁いんねんにや、女性にして数〻しばしば芸者狂いをなし、その望みを達せんとて、数万すまんの金を盗みしむくいはたちまちここにき年月を送る身となりつ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
先ずあれにするには西京さいきょう真葛まくずはらの豆が一番上等です。大阪のあまさき辺の一寸豆いっすんまめもようございます。上州沼田辺の豆も大きいそうですが新豆のしたのなら一昼夜水へ漬けます。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何事も無智識無経験という事が一番困るので西京さいきょうの松茸山へ素人しろうとりに入ると竹篦たけべらで地を掘ってこれから出ようというく小さな松茸まで採ってしまったり、極く若い松茸を踏みつぶしてしまったり
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
西京さいきょうでは大豆だいずを交ぜて煮ますし、大阪では蒟蒻こんにゃくを交ぜて煮ますし、外の処ではお茶を交ぜることもあり、白水しろみず湯煮ゆでる事もありますが章魚の形を崩さずに心まで柔く煮るのは大根で叩くのが一番です。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)