襟髪えりがみ)” の例文
旧字:襟髮
が、忽ち勇気をとり直すと、片手にナイフを握りながら、片手に妙子の襟髪えりがみつかんで、ずるずる手もとへ引き寄せました。
アグニの神 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
襟髪えりがみを取って沼へほうり込み、傘を持ってのそり/\水街道の麹屋へ帰るという、角力取という者はおおまかなもので。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
竜之助は、やはり片手でさぐって、のたり廻る幸内の襟髪えりがみ無造作むぞうさに掴んで、部屋の隅へ突き飛ばしてしまいました。
そして今にも襟髪えりがみつかむか、今にも崖から突き落とすか、そんな恐怖で息も止まりそうになっているんです。しかし僕はやっぱり窓から眼を離さない。
ある崖上の感情 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ガラッ八は飛んで行ったと思うと、第一番にまず大番頭の和七を、襟髪えりがみつかまないばかりに引っ立てて来ました。
怒気どきを破裂させた造酒が、グッ! 手をのばして長庵の襟髪えりがみを掴んだ。お六が割り込んで来た。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
父はもう私の襟髪えりがみつかんでいた。襟髪を掴んで、さも憎々しげに部屋じゅうを引ずり廻した。叔母が父の腕にしがみついて、「およしなさいよ、お父さん、およしなさいよ」
すると迷亭は「イヨー大分だいぶふとったな、どれ」と無作法ぶさほうにも吾輩の襟髪えりがみつかんで宙へ釣るす。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
船長ノルマンは猿臂えんぴをのばして、水夫竹見の襟髪えりがみをぐっとつかんだ。怪力だ。竹見はそのままひっさげられた。足をばたばたしたが、足の先に、どうしても甲板かんぱんがさわらないのであった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
縁側を降りかけていたお八代さんの襟髪えりがみを、うしろから引っ捉えましたが、そのまま仰向けにき倒して、お縁側から庭の上にズルズルときずりおろすと、やはりニコニコと笑いながら
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まる襟髪えりがみを取つて、四つばひに這はせられた恰好だ。思ふといぢらしくなる。
さあ一緒に來いと、襟髪えりがみを取らぬばかりにして妹を引き立てようとした。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
とうとう、追手の猿臂えんびが乞食の襟髪えりがみにかかった。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
万太郎はつかんでいた襟髪えりがみを放しました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立ちかかって、襟髪えりがみをつかもうとすると
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
あわてた宝屋、畳の上を額で泳ぐような恰好になるのを、ガラッ八は襟髪えりがみを取ってピタリと引据えました。
その長持にはふたがしてありません。蓋をしてない長持の中へ主膳は手を入れて、鼠を吊し出すような手つきをして、その襟髪えりがみを取って引き立てたのは幸内であります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして私の襟髪えりがみつかんで、地べたをずるずると裏門のところまで引きずって行って、門の外に突き出したかと思うと、荒々しくかんぬきを掛け、自分はさっさと庭の方へ歩いて行った。
支度をして出ようと思う処へ人殺し、殺してしまえと云う女の鉄切かなきり声ゆえ、つか/\と飛出しまして、又市は物をも言わずに、娘の腕を押えて居りました傳次の襟髪えりがみを取って引倒し
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さあ一緒に来いと、襟髪えりがみを取らぬばかりにして妹を引立てようとした。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
路地の中にソロソロして居る男——そいつは、御用ッ、と襟髪えりがみを掴むと、ヘタヘタと腰を抜かして、泥の中へ座り込むじゃありませんか。——大の男の腰を抜かすのを
こう言いながら土方歳三の襟髪えりがみを取って突き放すと、よろよろと彼方かなたに飛んでどうと倒れます。
先生を騙りなどと悪口雑言あっこうぞうごんをしては捨置かれぬ、出ろと襟髪えりがみを取って腕をつかまえて門前へ引摺り出し、打擲して、前に申し上げた通り割下水のみぞさかさまに突込つきこんで、踏んだり蹴たり
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
五、六歩のところに、煮えこぼれそうになっていた富山七之助が、飛付いて小僧の襟髪えりがみをギュッと。
ところが、りもしょうもない道庵は、また起き上って、ひょろひょろと裸松に組みついて来たのを、今度は前袋へも寄せつけず突き倒し、襟髪えりがみを取って無茶苦茶に振り廻しました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お浜の襟髪えりがみは竜之助の手に押えられて、同時にそこに引き倒されたのであります。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平次は又六のしぶとさに腹を立てて、日頃にもなくその襟髪えりがみに手を掛けました。
重三はキリキリと縄を絞って、お照の襟髪えりがみを取ります。
藤堂平助はふるえていたお梅の襟髪えりがみを取って
清吉の腕は、逃げ腰になるお万の襟髪えりがみに掛りました。