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襟卷
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えりまき
この
日雨が
上つて、
日脚がさつと
茶の
間の
障子に
射した
時、
御米は
不斷着の
上へ、
妙な
色の
肩掛とも、
襟卷とも
付かない
織物を
纏つて
外へ
出た。
母親は五十ばかり、
黒地のコートに
目立たない
襟卷して、
質素な
服姿だけれど、ゆつたりとして
然も
氣輕さうな
風采。
小娘は
何時かもう
私の
前の
席に
返つて、
不相變皸だらけの
頬を
萌黄色の
毛絲の
襟卷に
埋めながら、
大きな
風呂敷包みを
抱へた
手に、しつかりと三
等切符を
握つてゐる。……
しかも
垢じみた
萌黄色の
毛絲の
襟卷がだらりと
垂れ
下つた
膝の
上には、
大きな
風呂敷包みがあつた。その
又包みを
抱いた
霜燒けの
手の
中には、三
等の
赤切符が
大事さうにしつかり
握られてゐた。