裏長屋うらながや)” の例文
頼み置て其身は神田三河町二丁目千右衞門店なる裏長屋うらながや引越ひつこし浪々らう/\の身となり惣右衞門七十五歳女房お時五十五歳せがれぢう五郎二十五歳親子三人かすかに其日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その語もまだ残って東北ではアッパ、沖繩ではアンマがあるが、一般に呼名よびなは許される限り上級へと登って行って、裏長屋うらながやにも奥さんは多くなったのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
……おもことがある。淺草あさくさ田原町たはらまち裏長屋うらながやころがつてとき春寒はるさむころ……足袋たびがない。……もつと寒中かんちうもなかつたらしいが、うも陽氣やうきむかつて、何分なにぶん色氣いろけづいたとえる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
安月給取りの妻君、裏長屋うらながやのおかみさんが、此の世にありもしない様な、通俗小説の伯爵夫人の生活に胸ををどらし、随喜ずゐきして読んでゐるのを見ると、悲惨な気がする。をかしくもある。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ここの兵士町は二丁余りの長さで裏長屋うらながやになって居る。その間にはやはりチョェテン・カルポの兵隊町のようにいろいろの商売をして居る兵士があります。これはピンビタンにもあったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
道子みちこはもと南千住みなみせんぢゆ裏長屋うらながやまづしいくらしをしてゐた大工だいくむすめである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
種々いろ/\穿鑿せんさく仕つり候處居酒ゐざけ商賣の裏長屋うらながやにて漸々やう/\と尋ね當り彼の惣右衞門に仰せの趣きを申し聞かせ樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
裏長屋うらながやのあるじとふのが醫學生いがくせいで、内證ないしようあやしみやくつたから、白足袋しろたびもちゐる、その薄汚うすよごれたのが、片方かたつぽしか大男おほをとこのだからわたしあしなんぞふたはひる。細君さいくん内證ないしようで、ひだり穿いた——で仲見世なかみせへ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)