あま)” の例文
ほっと一息つく間もない、吹煽ふきあおらるる北海の荒浪が、どーん、どーんと、ただ一処ひとところのごとく打上げる。……歌麿の絵のあまでも、かくのごとくんばおぼれます。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
潮風しおかぜに吹き流されて。この島のいそにでも打ちあげれば、あまの子が拾うてたきぎにでもしてしまうだろう。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
... あまとあるは、海に潜る海女にてはなく、いにしえは海辺の遊女の異名であったあまを指したもので」。刀自殿はな顔をして「それまた、変った御説よの」と乗出してこられた。
玉取物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
右には未だ青き稲田をへだてて白砂青松の中に白堊の高楼あま塩屋しおやに交じり、その上に一抹の海青く汽船の往復する見ゆ。左に従い来る山々山骨さんこつ黄色く現われてまばらなる小松ちびけたり。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
折が有つたら又お目に掛ります。は、僕の居住すまひ? 居住は、まあ言はん方が可い、あまなれば宿も定めずじや。言うても差支さしつかへは無いけれど、貴方に押掛けらるると困るから、まあ言はん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
海にもぐったあまの、ある瞬間の姿に似ていたとでも形容すべきであろうか。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さゝ波や比良山風の海吹けは釣するあまの袖かへる見ゆ (讀人しらず)
歌よみに与ふる書 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
あまが捕りたての壺焼を焼かせて、それをうまそうに食べていると
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
むらさきにほふ武蔵野の原、塩竈しほがまぎたる朝げしき、一〇象潟きさがたあまとまや、一一佐野の舟梁ふなばし一二木曾の桟橋かけはし、心のとどまらぬかたぞなきに、なほ西の国の歌枕見まほしとて、一三仁安三年の秋は
藁すだれ掛け干す浦の日たむろは海苔とるあまがやすらひどころ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
光輪くわうりんは空にきはなしその空の下につどへるあま少女はも
芥川竜之介歌集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
砂よけやあまのかたへの冬木立 凡兆
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
見ざりけらしなあまが子よ。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いせをのあま耳馴みゝなれし
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
さざ波や比良ひら山風の海吹けば釣するあまそでかへる見ゆ (読人しらず)
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
絹漉きぬごしの雨のうちあま小舟をぶねゆたにたゆたふ。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夜桜に怪しやひとり須磨すまあま
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
子を抱いて老いたるあまや猫柳
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
いましあま艪拍子ろびやうし
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
干潟ひがたにくぼむあまが子の
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ささ波や比良ひら山風の海吹けば釣するあまの袖かへる見ゆ
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
あま小舟をぶねのそれならで
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
浦づたひ行くあまが子の
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
うしほわたあま兒等こら
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)