蜃氣樓しんきろう)” の例文
新字:蜃気楼
浴室よくしつまどからもこれえて、うつすりと湯氣ゆげすかすと、ほかの土地とちにはあまりあるまい、海市かいしたいする、山谷さんこく蜃氣樓しんきろうつた風情ふぜいがある。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞珠太夫といふのは、泰西たいせいのヴイナスの傳説のやうに、越中の國で蜃氣樓しんきろうを吐く大はまぐりを見付け、磯へ引あげて一と晩砂濱へ置くと、中から、玉のやうな女の兒が生れたといふのです。
われは第二曲の題として蜃氣樓しんきろうを得たり。こは拿破里又シチリアの水濱にて屡〻見あらはるゝものといへど、われは未だ嘗て見しことあらず。唯だ此重樓複閣の奧には、我に親しき神女み給ふ。
したがけに、山鳥やまどりいた蜃氣樓しんきろうごと白壁造しらかべづくり屋根やねいしさへ群青ぐんじやういは斷片かけららす。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あんずるに、これ修善寺しゆぜんじ温泉いでゆける、河鹿かじか蜃氣樓しんきろうであるらしい。かた/″\、そんなことはあるまいけれども、獨鈷とつこかゝ状態じやうたいをあてにして、おかけにつては不可いけない。……
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一種いつしゆ蜃氣樓しんきろうごと作用さよう此處こゝうつつたのかもわかりません。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)