羅生門らしょうもん)” の例文
こんどは京都きょうと羅生門らしょうもん毎晩まいばんおにが出るといううわさがちました。なんでもとおりかかるものをつかまえてはべるという評判ひょうばんでした。
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なんでも幼い時に一度、この羅生門らしょうもんのような、大きな丹塗にぬりの門の下を、たれかに抱くか、負われかして、通ったという記憶がある。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ゆっくり、手をのばして、城太郎の襟がみをつかむと、城太郎は、羅生門らしょうもんの綱(渡辺綱のこと)が鬼の腕に耐えるように踏んばって
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渡辺綱が羅生門らしょうもんの鬼退治に出て行ったあとを見送って、平井ノ保昌やすまさや坂田ノ金時きんときらが「綱の奴め、首尾よく鬼を退治して来るだろうか」
「あの女は少し綺麗すぎましたよ、それに持ちかけようが一通りじゃねえ。あんなのは羅生門らしょうもん河岸にも大根畑にもいませんよ」
羅生門らしょうもんと云う芝居を見ると、頭に花を戴いた大原女おはらめが、わたしは一条大宮から八瀬やせへ帰るものでござりますると云う処があったが、遠い昔
田舎がえり (新字新仮名) / 林芙美子(著)
鬼の出る羅生門らしょうもんに、鬼が来ずなってから、門もいつの代にか取りこぼたれた。つなぎとった腕の行末ゆくえは誰にも分からぬ。ただ昔しながらの春雨はるさめが降る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「よッ。やけに古風なせりふぬかしゃがるぞ。羅生門らしょうもんから鬼の使者でも来やがったのかな」
「なに、手はずに変わりがあるものかね。集まるのは羅生門らしょうもん、刻限は上刻じょうこく——みんな昔から、きまっているとおりさ。」
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
くらな中をあめにぬれながら、つな羅生門らしょうもんまえました。そしてもんまえを行ったりもどったり、しばらくのあいだおにの出てくるのをっていました。
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おめえみたいな容貌きりょうよしが、そんな……誰が見たって、事情わけのありそうな、ぼんやり顔でうろうろ歩いていてみな、今の都には、羅生門らしょうもん大江山おおえやまはないが、そのかわり
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしその間も阿濃あこぎだけは、安らかな微笑を浮かべながら、羅生門らしょうもんの楼上にたたずんで、遠くの月の出をながめている。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
きょうのひるごろ、洛内洛外の境、羅生門らしょうもんの守りについていた検非違使けびいしの手の者と、佐藤義清の使いの男とが、喧嘩けんかして、義清の召使は、拉致らちされて行ったということを——たった今、耳にしたのだ。
そのとたんつなはどさりと羅生門らしょうもん屋根やねの上にとされました。
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
一寸法師いっすんぼうしの話に出てくる鬼も一身の危険を顧みず、物詣ものもうでの姫君に見とれていたらしい。なるほど大江山おおえやま酒顛童子しゅてんどうじ羅生門らしょうもん茨木童子いばらぎどうじ稀代きだいの悪人のように思われている。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
万吉はひやりとして、その女の手を羅生門らしょうもんの鬼かとも強く感じた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに大きな焚火たきびをしてかたまっている人間たちは、みな、羅生門らしょうもんの巣を追い出されてきたかのごとき異装いそう怪異かいいな男どもばかりであって、この寒いがれた冬の月の下に、野の枯草を積みあげて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一人の下人げにんが、羅生門らしょうもんの下で雨やみを待っていた。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)