)” の例文
いには円陣までもが身動きもならぬほどに立込み、大半の者は足踏のままに浮れほうけ、踊りほうけていた。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
さうして今頃は田舍は田植の最中であることが思はれた。昔日の激しい勞働を寄る年波と共に今は止してゐても、父の身神には安息の日はひに見舞はないのである。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
村へは入った処で染物屋そめものやがあった。米はそこの雨垂落あまだれおちに溜っている美しい砂を見るとしゃがんでそれを両手ですくってはばらばら落してみた。いには両足を投げ出した。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
『そしてね、私の事を何んでも知つてゐるのよ、お兄さんの事も美佐ちやんの事も知つてゐるの、私気味が悪いから大急ぎで歩いてるとね、ひにグツと私の袂をつかんでね、』
内気な娘とお転婆娘 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
國元くにもとからはゝさんをんで此處こゝいゑで二つき介抱かいほうをさせたのだけれど、ひにはなになにやら無我無中むがむちうになつて、おもしてもなさけない、はゞ狂死きようしをしたのだね、わたしれをゆゑ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おくれじと空行く月を慕ふかなひにすむべきこの世ならねば
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
やわらこうはだえにそよぎ入っていうとうととねむくなる。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
いには私達が仕事中のアトリエの窓に向って石を投げつける者(それは経川の債権者達であった)さえ現れるに至ったので私は、像の命題を単に「男の像」とか
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)
彼はこの卑怯ひきょう因循いんじゅんな態度でいに人々から狙われるに至ったのかと私は気づいたが、不断のようにあえて代弁の役を買って出ようとはしなかった。そして私はわざとはっきりと
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
無限大と無限小とがひに合して虚無の大調和ともなるべき茫漠たる彼方から次第に、近く遠く去来してゐる程の想ひを抱かせられる玄妙不思議な合致が感じられて来るのであつた。
円卓子での話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)