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紙包
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かみづゝみ
やまと
煮と
書いた
牛肉の
鑵詰が三
本と
菓子でもあるかと
思ふ
小さな
紙包の
堅めた
食鹽の四つ五つとが
出た。
女は
紙包を
懐へ入れた。其手を
吾妻コートから
出した時、白い
手帛を持つてゐた。鼻の所へ宛てゝ、三四郎を見てゐる。
手帛を
嗅ぐ様子でもある。やがて、其手を不意に
延ばした。
下駄を
遠くへ
跳ね
飛ばされたり、
轉つたり、
紙包の
餅を
落したりして
泣く
聲が
相交つた。
彼等は
庭へおりてから
徐ろに
其の
紙を
開いて
小豆飯を
手で
抓んで
喫べた。
美禰子は
一寸三四郎の
顔を見たが、其儘
逆らはずに、
紙包を受け取つた。然し手に持つたなり、
納はずに
眺めてゐる。三四郎もそれを眺めてゐる。言葉が
少しの
間切れた。やがて、美禰子が云つた。
「はてな、
懷え
入えた
筈だつけが」と
兼博勞は
懷から
周圍を
探して
側へ
落ちた
小さな
紙包を
手にして