窓帷カアテン)” の例文
窓帷カアテンをひいた硝子窓ガラスまどのところで、瀬戸の火鉢ひばちに当たって小説の話をしていると、電話がかかって来て、葉子は下へおりて行った。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一等室の鶯茶うぐいすちゃがかった腰掛と、同じ色の窓帷カアテンと、そうしてその間に居睡いねむりをしている、山のような白頭の肥大漢と、——ああその堂々たる相貌に
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ものの十丈もあろうと見えて、あたかもこの蒼沼にさっ萌黄もえぎ窓帷カアテンを掛けて、さかさすそを開いたような、沼の名は、あるいはこれあるがためかとも思われた。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ことごと窓帷カアテンを引きたる十畳の寸隙すんげきもあらずつつまれて、火気のやうやく春を蒸すところに、宮はたいゆたか友禅縮緬ゆうぜんちりめん長襦袢ながじゆばんつま蹈披ふみひらきて、紋緞子もんどんす張の楽椅子らくいすりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
窓には白い、透いて見える窓帷カアテンが懸けてあります。その向うには白い花ばかりが見えています。みんな小さい花でございまして、どれもぱっと開いてしまうということはないのでございます。
(新字新仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
木の枝を押し分けると、赤い窓帷カアテンを掛けた窓硝子まどがらすが見える。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
寺の境内の立木のかげになっている窓に、彼女は感じの好い窓帷カアテンの工夫をしたりして、そこに机や本箱をえた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
几帳きちやうとも、垂幕さげまくともひたいのに、うではない、萌黄もえぎあを段染だんだらつた綸子りんずなんぞ、唐繪からゑ浮模樣うきもやう織込おりこんだのが窓帷カアテンつた工合ぐあひに、格天井がうてんじやうからゆかいておほうてある。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼は部屋を決める時、半永久的に床を自分の趣味で張りかえ、壁紙や窓帷カアテンも取りかえて、建築の基本的なものに触れない程度で、住み心地ごこちの好いように造作を造りかえた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
装飾かざりの整ったものではないが、張詰めた板敷に、どうにか足袋跣足はだし歩行あるかれる絨氈じゅうたんが敷いてあり、窓も西洋がかりで、一雨欲しそうな、色のややせた、緑の窓帷カアテンが絞ってある。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)