けがれ)” の例文
このあいだ、一同はけがれみ、口をきよめ、念誦ねんず一心、一歩も忠義堂を出ることはない。そこに寄りつどったきりなのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
禍害なるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、汝らは白く塗りたる墓に似たり、外は美しく見ゆれども、内は死人の骨とさまざまのけがれとに満つ。
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
何等の怠慢おこたりぞ、何ぞかくとゞまるや、わしりて山にゆきてけがれを去れ、さらずば神汝等にあらはれたまはじ。 一二一—一二三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
この世にあろうとも思えぬ畜道のけがれにまみれるくらいなら、いっそ死んだほうがましだと、露見した場合の泰文の仕置を覚悟で、白川の邸で行われている
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いやが上にけがれなく見せるだけで、何の役にもたたない、それはいいが、くだんの顔で、肉をかじると、厚く切ったベイコンなんか、頬張る程には口が開けないし
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
その為には最もけがれを忌んで、こういうやや人里を離れた清き泉のほとりに、機殿はたどのというものを建てて若い娘たちに、その大切な布を織らせていたかと思います。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
我が爲めに祈りて世のけがれを受けざらしめんとして、その度ごとに知らず識らずやじりを我心に沒せしめたり。
政元の魔法は成就したか否か知らず、永い月日をまず怠らずに、今日も如法に本尊を安置し、法壇を厳飾し、先ず一身のあかを去りけがれを除かんとして浴室に入った。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
アア、一転瞬にして、珠子のけがれを知らぬ、花びらの様な唇は、その気高いほこりを失おうとしているのだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一 身のかざりも衣裳の染色模様なども目にたゝぬ様にすべし。身と衣服とのけがれずしてきよげなるはよし。すぐれきよらを尽し人の目に立つ程なるはあしし。只我身に応じたるを用べし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その色をやわらげ、奏して言いけるよう、「陛下、火はもろもろけがれを清めると申します。大璽も再び清潔になりましたから、臣は再びこれを尚蔵いたしますでございましょう。」
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
彼が病院の死亡室に轉ツてゐる施療患者の屍體のあか、または其の他のけがれを奇麗に洗ひ、または拭取ツて、これを解剖臺に載せるまでの始末方と來たら、まことに好く整ツたものだ
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
自分で体のけがれが厭でたまらず、腹が立って墓にも帰らないで、風のまにまに往っているうちにも、生きた人が羨ましくってしかたがなかったのです、そして、昼は草木によっかかり
蓮香 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
曲り、朽ち、ゑ、死ぬる物のけがれ
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わが墓所はかどころをば血とけがれとの溝となせり、是においてか天上よりちしもとれる者も下界に己が心を和らぐ。 二五—二七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
こんな畜生道のけがれにまみれるくらいなら、いっそ死んだほうがましだと思い、露見した場合の泰文の仕置も覚悟で、白川の邸で行なわれている浅間しい行態ぎょうたいを日記にして上訴したが
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
奥方は松のうちに血のけがれを見ることは、いけないと思った。
皿屋敷 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
曲り、朽ち、え、死ぬる物のけがれ
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)