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真紅
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まつか
ふりがな文庫
“
真紅
(
まつか
)” の例文
旧字:
眞紅
紳士はそれを聞くと、黙つて婦人を連れて窓際の
小卓
(
こづくゑ
)
に案内した。
卓
(
つくゑ
)
の上には
真紅
(
まつか
)
な花が酒のやうな甘つたるい
香気
(
にほひ
)
を漂はしてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「三八七番、この
真紅
(
まつか
)
な
面
(
つら
)
は何だ。」「それは私の顔で御座います。」「何で描いた。」「水蜜桃の腐れたので描きました。」
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「ねえ、明日帰つたら、私、洋服屋へ行くンだけど、あんたも行つてみてくンないかなア……。
真紅
(
まつか
)
なスーツで、
金釦
(
きんボタン
)
をつけて貰つたンだよ」
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
私は顔が
真紅
(
まつか
)
になつてどうすることも出来ませんのでしたがおさやんはしらずに着物の紐をしめたりなどして居ました。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
一俵掛けて、兄弟してうんと力を入れた時は、二人とも顔が
真紅
(
まつか
)
に成る。地主は
衡
(
はかりざを
)
の
平均
(
たひら
)
になつたのを見澄まして、
錘
(
おもり
)
の糸を動かないやうに持添へ乍ら調べた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
真紅
(
まつか
)
な奴が枝も裂けさうになツてるのへ、真先に僕が木登りして、
漸々
(
やうやう
)
手が林檎に届く所まで登ツた時、「誰だ」ツてノソノソ出て来たのは、そら、あの畑番の六助
爺
(
ぢぢい
)
だよ。
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
黄
(
きいろ
)
い小さな花、紫色をした龍胆に似た花、白く叢を成して咲いてゐる花、運が好いと、
真紅
(
まつか
)
な美しい撫子の一つ二つをその中から捜すことは出来た。波の音は地を
撼
(
うごか
)
すやうに絶えずきこえて来てゐた。
磯清水
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
今の今迄
真紅
(
まつか
)
な夢を見てゐたつけが、彼女は鼻血を出しました。
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
空が焼けた、
真紅
(
まつか
)
にやけた!
秋の小曲
(新字旧仮名)
/
漢那浪笛
(著)
梅子は
真紅
(
まつか
)
になりて
俯
(
うつむ
)
きぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
仲間が死骸を片付けようとして見ると、
画家
(
ゑかき
)
は耶蘇のやうに胸に
孔
(
あな
)
があいて、孔からは
真紅
(
まつか
)
な血が流れてゐた。仲間はそれを見ると
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
見ればお志保で、何か用事ありげに駈寄つて、未だ物を言はない先からもう顔を
真紅
(
まつか
)
にしたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
初めて自分の分身として
光
(
ひかる
)
を見た時の満足にも劣らない満足さを感じるのですが、やはりあの時のやうに目を
開
(
あ
)
いて居ない、
真紅
(
まつか
)
な唇は柔かく
閉
(
とざ
)
されて鼻の側面が
少女
(
をとめ
)
のやうである
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
そよかぜに子供が遊んでゐる
玉蜀黍
(
たうもろこし
)
はそばに
真紅
(
まつか
)
な毛を揺りてゐる
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その
皓
(
しろ
)
い歯で
真紅
(
まつか
)
な花を咬んでゐる。
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
哲学者はそれには何とも答へないで、いきなり
痰唾
(
たんつば
)
を
富豪
(
かねもち
)
の顔に吐きかけた。
富豪
(
かねもち
)
は
西洋茄子
(
トマト
)
のやうに
真紅
(
まつか
)
になつて
憤
(
おこ
)
つた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
目を
開
(
あ
)
けてつくづく見れば
薔薇
(
ばら
)
の木に薔薇が
真紅
(
まつか
)
に咲いてけるかも
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
四条派の名家だつた望月玉泉が、晩年に京都のある高等女学校に、邦画の教師として一週幾時間か
酸漿
(
ほほづき
)
のやうな
真紅
(
まつか
)
な顔を
覗
(
のぞ
)
けてゐた事があつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
大きなる
紅薔薇
(
べにばら
)
の花ゆくりなくぱつと
真紅
(
まつか
)
にひらきけるかも
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その
報
(
しら
)
せがナポレオンの耳に入ると、この色の白い洒落者の小男は桜んぼのやうに
真紅
(
まつか
)
になつて怒つた。そして
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
散ろか散るまいかままよ
真紅
(
まつか
)
に咲いてのきよ
真珠抄
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
文豪は隣りから一向返事が来ないので、
真紅
(
まつか
)
になつて怒つた。そして今度は火のやうな手紙を書いて送つた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
積藁の上に大樹の山椿丹念に落す花
真紅
(
まつか
)
なり
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その瞬間
独帝
(
カイゼル
)
は真青になつて、帽子から拳を引き外した、見ると、白い手首に
真紅
(
まつか
)
な血がたらたらと流れてゐる。
独帝
(
カイゼル
)
は恨めしさうにその男の帽子を覗き込むだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
記者は
独語
(
ひとりごと
)
を言ひ言ひ、
真紅
(
まつか
)
に
熟
(
う
)
れた柿の実を想像してみた。実際白状すると、記者は柿が好物だつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
すると娘は急に
真紅
(
まつか
)
になつた。
覆盆子
(
いちご
)
のやうに
真紅
(
まつか
)
になつて、眼には一杯涙さへさしぐむでゐる。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
大道氏は機関車のやうに鼻嵐を吹いて
真紅
(
まつか
)
になつてゐたが、まあ仕合せと脱線もしないで済んだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
知事は
真紅
(
まつか
)
な顔をして起き上つた。属官は自分の
疎忽
(
そこつ
)
のやうにお辞儀をしい/\フロツクコートの埃を払つた。フロツクコートは綺麗になつた。だが、肝腎の顔は
何
(
ど
)
うする訳にも
往
(
ゆ
)
かなかつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
火吹達磨
(
ひふきだるま
)
のやうに
真紅
(
まつか
)
になつた和尚の顔を見て取つた中馬は、すごすごと
庫裏
(
くり
)
に入つて往つたが、暫くすると
掌面
(
てのひら
)
に何か血だらけの物を載せて、ひよつくり方丈に出て来て黙つてお辞儀をした。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
“真紅”の意味
《名詞》
真 紅(しんく)
濃い紅色。
(出典:Wiktionary)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
紅
常用漢字
小6
部首:⽷
9画
“真紅”で始まる語句
真紅島田
真紅金繍