真桑瓜まくわうり)” の例文
旧字:眞桑瓜
お民が家のものを呼び集めて季節がらの真桑瓜まくわうりでも切ろうと言えば皆まで母親には切らせずに自分でも庖丁ほうちょうを執って見たりして
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
斗満で食った土のものゝ内、甘藍、枝豆えだまめ玉蜀黍とうもろこし、馬鈴薯、南瓜とうなす蕎麦そば大根だいこきびもち、何れも中々味が好い。唯真桑瓜まくわうりは甘味が足らぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
てのひらに載せた真桑瓜まくわうりのその色を見、その重さを感ずるようにわが五感の感覚や意識で明白に解脱の正体を見きわめなければ安心出来なかった。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
○くだものにじゅんずべきもの 畑に作るものの内で、西瓜すいか真桑瓜まくわうりとは他の畑物とは違うて、かえってくだものの方に入れてもよいものであろう。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
店へ来る客の中に、過般いつか真桑瓜まくわうりを丸ごとかじりながら入つた田舎者いなかものと、それから帰りがけに酒反吐さけへどをついた紳士があつた。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むかしから東京の人が口にし馴れた果物は、西瓜すいか真桑瓜まくわうり、柿、桃、葡萄、梨、栗、枇杷びわ蜜柑みかんのたぐいに過ぎなかった。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「仏壇の前に饅頭まんじゅうだの真桑瓜まくわうりだの、やたらに積んで、線香の燃えさしがザクザクあったところを見ると、まんざら忘れたわけじゃないでしょう」
土産みやげには何を持って来てやろう。イタリアの柘榴ざくろか、イスパニアの真桑瓜まくわうりか、それともずっと遠いアラビアの無花果いちじくか?
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
内祝言ないしゅうげんだけを済まして内儀おかみさんになり、翌年になりますと、丁度この真桑瓜まくわうり時分下総瓜しもふさうりといって彼方あちらは早く出来ます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
疲れに疲れし一行は、途中掛茶屋さえあれば腰をおろして、氷水を飲む、真桑瓜まくわうりを食う、饅頭まんじゅうをパク付く。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
時々には床几に休んで、梨や真桑瓜まくわうりなんぞを食べて行くこともありました。そのころ市野さんは十九でしたが、わたくしは十四の小娘でまだ色気も何もありゃあしません。
水鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼は言下に答えた、「あんな真桑瓜まくわうりのできそくないなんか小指でちょいですよ」
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
多いものは小間物屋、可なり大きな真宗しんしゅうの寺、天理教会、清素せいそな耶蘇教会堂も見えた。店頭みせさきで見つけた真桑瓜まくわうりを買うて、天塩川に往って見る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
真桑瓜まくわうりは尖の方よりもつるの方がよく熟して居るが、皮に近い部分は極めて熟しにくい。西瓜などは日表ひおもてが甘いというが、外の菓物にも太陽の光線との関係が多いであろう。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
西瓜や真桑瓜まくわうりのたぐいをくらうことを堅く禁じられていたので、大方そのせいでもあるか、成人の後に至っても瓜の匂を好まないため、漬物にしても白瓜しろうりはたべるが、胡瓜きゅうりは口にしない。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
水へ突込つッこんでるように、うねったこの筋までが蒼白く透通って、各自てんでの顔は、みんなその熟した真桑瓜まくわうりに目鼻がついたように黄色くなったのを、見合せて、呼吸いきを詰める、とふわふわと浮いて出て
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕「しかし積み上げてあった野菜は胡瓜きゅうり真桑瓜まくわうりばかりでしたが、……」
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
貢君は余等の毛布や、関翁から天幕へみやげ物の南瓜とうなす真桑瓜まくわうり玉蜀黍とうもろこし甘藍きゃべつなぞを駄馬だばに積み、其上に打乗って先発する。仔馬こうまがヒョコ/\ついて行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
真桑瓜まくわうり西瓜すいか、桃、すももの実をひやして売る。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)