田村たむら)” の例文
そのうち、一ばん背の高いのは花田はなだ君といって、中学の二年生、あとのふたりはおなじ中学の一年生で、石川いしかわ君と田村たむら君です。
虎の牙 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そう云う消息しょうそくに通じている洋一は、わざと長火鉢には遠い所に、黙然もくねんと新聞をひろげたまま、さっき田村たむらに誘われた明治座の広告を眺めていた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一寸ちよつとうかゞひますが、アノ、アノ、田村たむらをんなのおはか御在ございますが、アノ、それはこちらのおてら御在ございませうか。」と道子みちことゞこほちにきいてた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
同僚どうりょう田村たむら先生にきくと、しっ というような顔で田村先生はおくまった校長室に、あごをふった。そして小さな声で
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
赤蜻蛉あかとんぼう田圃たんぼみだるれば横堀よこぼりうづらなくころちかづきぬ、朝夕あさゆふ秋風あきかぜにしみわたりて上清じやうせいみせ蚊遣香かやりかう懷爐灰くわいろばいをゆづり、石橋いしばし田村たむらやが粉挽こなひうすおとさびしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
先ず鉄道線路を踏切って、伏古古潭ふしここたんの教授所を見る。代用小学校である。かたの如き草葺くさぶきの小屋、子供は最早帰って、田村たむら恰人まさとと云う五十余の先生が一人居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「外国と云えば田村たむらさんじゃないかね。併しあの人は先生の留守は知っている筈だがね」
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
ねえ田村たむらさん、小説だって、そうだろう
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕の友人の田村たむら検事が今度の事件の受持に極ったということだから、みんなあの男に渡してやる積りだ。これだけあれば随分調しらべの足しになる。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
葬式とむらひをしたのは五ねんばかりまへで、お正月しやうぐわつもまださむ時分じぶんでした。松戸まつど陣前ぢんまへにゐる田村たむらといふ百姓家しやうやひとがお葬式とむらひをしてくれたんで御在ございますが……。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
店の電話に向って見ると、さきは一しょに中学を出た、田村たむらと云う薬屋の息子だった。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)