状袋じょうぶくろ)” の例文
なみ状袋じょうぶくろにも入れてなかった。また並の状袋に入れられべき分量でもなかった。半紙で包んで、封じ目を鄭寧ていねいのりり付けてあった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それを近所の料理屋の寿美屋の料理番が七十五銭で買い取って、あくる朝すぐに包丁を入れると、その鯔の腹のなかから手紙の状袋じょうぶくろが出た。
有喜世新聞の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
状袋じょうぶくろ、レターペーパー等という書信用の品物を一つも持たず、ホテル備え付の分を使用した模様もない事が、注目に価する位のものである。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は五年間に貰いためた労役ろうえきの賃金の入った状袋じょうぶくろをしっかりと握りながら、物珍ものめずらしげに、四辺あたりを見廻したのだった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
屋根やねひくい、くらちいさないえ幾軒いくけんもあって、いえなかにはたけぐしをつくったり、つまようじをけずったり、なかには状袋じょうぶくろをはったりしているおとこも、おんなもあった。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
小さな二本のくぎといっしょに状袋じょうぶくろに入れてあるのを手のひらにあけて、しばらくながめていた母は、そのまま状袋にもどして、火鉢ひばち引出ひきだしにしまった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
些細な話であるが、「病牀六尺」を書いて、それを新聞社へ毎日送るのに状袋じょうぶくろに入れて送るその状袋の上書うわがきをかくのが面倒なので、新聞社に頼んで状袋に活字で刷つてもらふた。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
葉子はそれを日本ふう状袋じょうぶくろに収めて、毛筆で器用に表記を書いた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ねずみいろのしわくちゃになった状袋じょうぶくろ
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かしげてゐました。わたくしに宛てた継子さんの手紙は、もうすつかり書いてしまつて、状袋じょうぶくろに入れたまゝで食卓ちゃぶだいの上に置いてありました。
ホテルの名前入りの状袋じょうぶくろや紙も無論使用しなかった事と、銀行の支配人に出鱈目でたらめの住所や名前を云った事と、訪問客も手紙も絶無であった事などによって明かに推測される。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
健三は黙って障子のそばに据えてある比田の机を眺めた。硯箱すずりばこ状袋じょうぶくろや巻紙がきちりと行儀よく並んでいる傍に、簿記用の帳面が赤い脊皮せがわをこちらへ向けて、二、三冊立て懸けてあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
病める枕辺まくらべに巻紙状袋じょうぶくろなど入れたる箱あり、その上に寒暖計を置けり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
私は手を内懐うちぶところへ入れて、状袋じょうぶくろの中から五十銭玉を裸のまま取り出した。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ねずみ色の状袋じょうぶくろ
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)