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燈光
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とうくわう
今の
世に、かくも
驚く
可き
速力をもつて
居る
船は、
水雷驅逐艦か、
水雷巡洋艦の
他はあるまい、あの
燈光の
主體は
果して
軍艦の
種類であらうか。
燈光燦として
眩ゆき所、地中海の汐風に吹かれ来しこの友の
美髯、如何に
栄々しくも嬉しげに輝やきしか、我は
実になつかしき詩人なりと思ひぬ。
吾等の
叫聲は
忽ち
怒濤の
響に
打消されてしまつたが、
只見る、
黒暗々たる
遙か/\の
沖に
當つて、
一點の
燈光ピカリ/\。
兎角する
程に
怪の
船はます/\
接近し
來つて、
白、
紅、
緑の
燈光は
闇夜に
閃めく
魔神の
巨眼のごとく、
本船の
左舷後方約四五百
米突の
所に
輝いて
居る。