無頓着むとんちやく)” の例文
「イヤ、左様さう固く出られるとおほいに閉口する——お互様ぢや」と、客は無頓着むとんちやくに打ち笑ひ「知らぬ方でもないので、御邪魔に来ました」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
水滸伝すいこでんのやうに思はれたり、又風情ふぜいごのみのやうに言はれたりしたやうであるが実際はもつと素朴で無頓着むとんちやくであつたのだらうと想像する。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
これけつして責任せきにんらぬわけではい、物事ぶつじ無頓着むとんちやくわけでありません。習慣上しふくわんじやう缺點けつてんであらうとおもひます。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
次の時代に生れて来る若いものゝ身のうへきはめて無頓着むとんちやく訓戒くんかい批評する事のできる便利な性質を持つてゐるものだ
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
石炭の煙を吸ふのがどれほど健康に害であるか、また毎日多くの怪我人が出来るほどの危険の伴ふ仕事に対して、私は殆ど無頓着むとんちやくであつた。全く盲目的であつた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
算術の四則にはけて居り、それを実の算盤そろばんに応用することにもたくみではあつたけれども、美に就ては如何いかなる種類のそれにも一向無頓着むとんちやくな、当主の小学校長をたぶらかして
「ウム、の松島の一件か」と、大和は例の無頓着むとんちやくに言ひ捨てしが、たちまち心着きてや両手に頭かゝへつ「やツ」と言ひつゝお花を見やる
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
乍去さりながら日本人にほんじん從來じゆうらい習慣しふくわんでありませうが、斯樣かやうことめて無頓着むとんちやくおほい。責任せきにんおもんずるのねんとぼしい。獨立どくりつしてものをさめてくといふことすこしもい。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
あのあまくしてやはらかく、たちまちにして冷淡れいたん無頓着むとんちやくな運命の手にもてあそばれたい、とがたい空想にられた。空想のつばさのひろがるだけ、春の青空が以前よりも青く広く目にえいじる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さうしてそんなことには無神経なほど無頓着むとんちやくな彼の妻が、その子供たちに雨降りのなかを、お豆腐を買つて来いの、お砂糖がなくなつたのと言つては、あまりしげしげ用事に使ふのを見ると
去れど芳子は一向無頓着むとんちやくに、大勝利を報告する将軍の如くぞ勇める「姉さん、私、今まいことを聴いてよ、篠田さんは到頭たうとうしばられて、牢屋へ行きなさるんですと」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)