無縁むえん)” の例文
其方てらはうむりし趣きなるが右は當時たうじ無縁むえんなるか又はしるし石塔せきたふにてもたてありやと尋けるに此祐然もとより頓智とんち才辨さいべんの者故參候若君わかぎみ澤の井の石塔せきたふは御座候も香花かうげ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
東京に出て相応そうおうに暮らして行く者もあるが、春秋の彼岸やぼんに墓参に来る人の数は少なく、余の直ぐ隣の墓地でも最早もう無縁むえんになった墓が少からずあるのを見ると
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
するとこの仏さまは無縁むえんになっているのですかというと、いえ無縁という訳ではありませぬはぎの茶屋の方に住んでおられる七十恰好かっこうの老婦人が年に一二度お参りに来られます
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
風体ふうていによりて夫々それ/″\の身の上を推測おしはかるに、れいるがごとくなればこゝろはなはいそがはしけれど南無なむ大慈たいじ大悲たいひのこれほどなる消遣なぐさみのありとはおぼえず無縁むえん有縁うえんの物語を作りひとひそかにほゝゑまれたる事にそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
取繕とりつくろひ申にぞ次右衞門三五郎口をそろへて然らば其石塔せきたふ參詣さんけい致し度貴僧きそうには先へ歸られ其用意よういをなし置給へと云に祐然かしこまり候と急ぎ立歸りて無縁むえんの五りんたふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
手向たむけ候者一人も是なししか拙僧せつそう宗旨しうしの儀は親鸞上人しんらんしやうにんよりの申つたへにて無縁むえんに相成候つかへはめい日には自坊じばうより香花かうげ手向たむけ佛前ぶつぜんに於て回向ゑかう仕つり候なりと元より墓標はかじるしなき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)