炉縁ろぶち)” の例文
ここで長幼の序が定まり、家長主婦の権威が確立するのみならず、火神の祭りも占問うらどいも、みなこの炉縁ろぶちの木の上で行われたのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
炉縁ろぶちの上に置いてあるわいの。浅七が蚊帳に入ってから来たもんじゃさかい、読まなんだのやわいの。邪魔でも一寸読んで呉んさい。」
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
買主が入り込んでのちも、其栗の木は自分が植えたの、其にらや野菜菊は内で作ったの、其炉縁ろぶちは自分のだの、と物毎にあらそうた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
婦人おんな炉縁ろぶち行燈あんどう引附ひきつけ、俯向うつむいてなべの下をいぶしていたが、振仰ふりあおぎ、鉄の火箸ひばしを持った手をひざに置いて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まんは口をげるようにしてげだらけの炉縁ろぶちへ、煙管きせるたたきつけるようにしていった。
手品 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そしてまた囲炉裏座に帰って見ると、ちょろちょろと燃えかすれた根粗朶ねそだの火におぼろに照らされて、君の父上と妹とが炉縁ろぶちの二方に寝くるまっているのが物さびしくながめられる。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
(中略)同庵の茶室の炉縁ろぶちは奥州征討の際若松城下よりの分捕として有名なりしが、今は其の茶室の跡もなく炉縁も何処へ伝はり候や不明、姉妹共故人となられ其後の事存じ申さず候。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
両足を炉縁ろぶちに踏込みながら、獲物えものの自慢話をはじめるのが例になっている。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何を一ツ頼んでも間に合ったためしがなく、赤松の炉縁ろぶち一ツに三日の手間を取るというのは、多方ああいう手合だろうと仙が笑ったも無理はありませぬ、それを親方が贔屓ひいきにしたので一時は正直のところ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
狩猟小舎を建てた時はしばみの木の炉縁ろぶちを作ったら
アイヌ神謡集 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
婦人をんな炉縁ろぶち行燈あんどう引附ひきつけ、俯向うつむいてなべしたいぶしてたが振仰ふりあふぎ、てつ火箸ひばしつたひざいて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
万はあきれて、炉縁ろぶちへまたも煙管きせるを叩き付けながらいった。
手品 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
三造は片手をちゃんと炉縁ろぶちいて
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)