滾々こん/\)” の例文
関所は廃れ、街道には草蒸し、交通の要衝としての箱根には、昔の面影はなかつたけれども、温泉いでゆ滾々こん/\として湧いて尽きなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
心の泉を汲んで汲んで汲み干して了ふと、あとから新しい泉が滾々こん/\として湧いて来ると言ふが、それも矢張さうした異常なる心理である。
生滅の心理 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
藝妓、幇間たいこの騷いだのも無理はありません。大村兵庫の左の眼に楊弓やうきうの矢が眞つ直ぐに突立つて、血潮は滾々こん/\として頬から襟へ滴つて居るではありませんか。
あたま徃來わうらいとほるものは、無限むげん無數むすう無盡藏むじんざうで、けつして宗助そうすけ命令めいれいによつて、まることやすこともなかつた。らうとおもへばおもほど滾々こん/\としていてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかしながら、自分の胸の中にある秘密の井戸から滾々こん/\と湧き上って来る快感が、少くとも病的の性質のものであることは、おぼろげながら気がついたに違いない。
きよらかなみづ滾々こん/\いづながれて、其邊そのへん草木くさきいろさへ一段いちだんうるはしい、此處こゝ一休憩ひとやすみこしをおろしたのは、かれこれ午後ごゝの五ちかく、不思議ふしぎなるひゞきやうやちかくなつた。
日を照りかへして白くきらめく岩の山、見るだに咽喉のんどのいらく土の家、見るものこと/″\く唯渇きに渇きて、旅人の気も遠く目もくらまんとする時、こゝに活ける水の泉あり、滾々こん/\として岩間より湧き出づ。
池には天下第一泉の清い水が滾々こん/\として湧き出してゐる。日はうらゝかに照つてゐる。実際、唐扇にでも書いてありさうなシインであつたのを記憶してゐる。
花二三ヶ所 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
自分が云おう云おうとして云えなかった物が、其処に滾々こん/\としていずみの如く流れて居るのを会得する。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
帝國軍人ていこくぐんじん鮮血せんけつ滾々こん/\とばしりかゝるのもえた。
美しい清水の滾々こん/\として湧き出してゐるのを、その湧き出して来てゐる水の明るい日影にチラチラとプラチナの線の様に動いてゐるのを、水の中にある小石が或は白く或は黒く、或は青く
磯清水 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
けれども依然として不安なので、今度はソッと台所へ忍び込み、樽の口から冷めたい液を腹の中へ滾々こん/\と注ぎ込んだ。するとカーッと暖まって体中に凍り付いて居た恐怖が次第々々に溶けて行った。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)