気病きやみ)” の例文
旧字:氣病
と思いますと是が気病きやみになり、食も進まず、奥へ引籠ひきこもったきり出ません、母親おふくろは心配するが、兄三藏は中々分った人でございますから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
従類じうるゐ眷属けんぞくりたかつて、げつろしつさいなむ、しもと呵責かしやく魔界まかい清涼剤きつけぢや、しづか差置さしおけば人間にんげん気病きやみぬとな……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
気病きやみの後の様なたるんだ顔にまぶしい午後の日を受けて、物珍らし相にこの村を瞰下みおろしてゐると、不図、生村うまれむら父親おやぢの建てた会堂の丘から、その村を見渡した時の心地が胸に浮んだ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それから関を経て、東海道を摂津国せっつのくに大阪に出て、ここに二十三日を費した。その間に松坂から便たよりがあって、紀州の定右衛門が伜の行末を心配して、気病きやみで亡くなったと云う事を聞いた。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
奥様も人に顔を見られるのをいとって、年中アノ座敷に閉籠とじこもったままで滅多に外へ出た事も無かったでしたが、ツマリ自分の良心に責められたのでしょう、気病きやみのようにブラブラと寝つ起きつ
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
高が気病きやみと聞いたものが、思いの外のお雪の様子、小宮山はまず哀れさが先立って、あるじと顔を見合せまする。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
殊にお袖親子が参詣の時には、一味徒党のお由も一緒に付いて行ったのですから、怪談がかりの芝居をうまく運んだと見えます。その芝居が図にあたって、娘は気病きやみになる。おふくろも半病人になる。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大旦那様はそんなにも有仰おっしゃりますまいが、貴方の御病気の様子を奥様がお聞きなすって御覧ごろうじろ、大旦那様の一件で気病きやみでおなくなり遊ばしたようなお優しい
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ですからね、照吉さんのは、気病きやみだって。それから大事の人の生命いのちに代って身代みがわりに死ぬんですって。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前途ゆくてへ、今大鳥居をくぐるよと見た、見る目もあやな、お珊の姿が、それまでは、よわよわと気病きやみの床を小春日和こはるびよりに、庭下駄がけで、我が別荘の背戸へ出たよう、扱帯しごきつま取らぬばかりに
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)