民子たみこ)” の例文
夫婦ふうふはこれに刎起はねおきたが、左右さいうから民子たみこかこつて、三人さんにんむつそゝぐと、小暗をぐらかたうづくまつたのは、なにものかこれたゞかりなのである。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
父は旅行、母は買物、兄は散歩といふわけで、珍しく民子たみこ一人が、縁側で日向ぼつこをしてゐるところへ、取次も乞はず、義一がのつそり庭伝ひにはひつて来た。
花問答 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
その自分も注意ちゅういし家のものの話にも注意してみると、花前はかならず一度ぐらいずつ民子をだいてみる。民子たみこもますます花前はなまえ、花前といってへやへあそびにゆく。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
くるひまつはり、からまつて、民子たみこはだおほうたのは、とりながらもこゝろありけむ、民子たみこ雪車そりのあとをしたうて、大空おほぞらわたつてかりであつた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
花前は、けさ民子たみこをだいてしばらくあるいておった。細君はもちろん、若衆わかしゅうをはじめ下女げじょまでいっせいにふしぎがったとの話である。それは実際じっさいふしぎに相違そういない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
てつごと健脚けんきやくも、ゆきんではとぼ/\しながら、まへつてあしあとをいんしてのぼる、民子たみこはあとから傍目わきめらず、のぼ心細こゝろぼそさ。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
自分が牛舎の流しを出て台所へあがり奥へ通ったうちに梅子とお手伝いは夕食のしたくにせわしく、雪子もお児もうろうろ遊んでいた、民子たみこ秋子あきこもぶらんこに遊んでいた。
奈々子 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)