かこ)” の例文
我身わがみの因果をかこち、黒髪をたち切って、生涯を尼法師で暮す心を示したお若の胸中を察します伯父は、一層に不愍ふびんが増して参り、あゝ可愛そうだ
吹通ふきとほしのかぜすなきて、雪駄せつたちやら/\とひととほる、此方こなた裾端折すそはしをりしか穿物はきものどろならぬ奧山住おくやまずみ足痕あしあとを、白晝はくちういんするがきまりわるしなどかこつ。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
花に言わすれば、まこと迷惑至極めいわくしごくかこつであろう。花のために、一掬いっきくの涙があってもよいではないか。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
我身の薄命をかこち、「何処かの人」が親をないがしろにしてさらにいうことを用いず、何時いつ身をめるという考も無いとて、苦情をならべ出すと、娘の親は失礼な、なにこの姿色きりょうなら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
されどひたすらに妾との別れを悲しみ、娑婆しゃばに出でて再びうえに泣かんよりは、今少し重き罪を犯し、いつまでもあなた様のおそばにてお世話になりたしなど、心も狂おしう打ちかこつなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
わび人は世をひたすらにかこつかな世はまた我をいかにかこたん
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
談話だんわ次手ついでに松川が塾の荒涼たるをかこちしより、予は前日藪をけんせし一切いつさいを物語らむと、「実は……」とわづか言懸いひかけける、まさに其時、啾々しう/\たる女の泣声なきごえ、針の穴をも通らむず糸より細く聞えにき。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)