歌人うたよみ)” の例文
長押なげしの上には香川景樹かげきからお婆さんの配偶つれあいであった人に宛てたという歌人うたよみらしく達者な筆で書いた古い手紙が額にして掛けてある。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どうもこの歌が出来た時には歌人うたよみから見るとむろんつまらんものでもありましょうが自分の考えからすると実に愉快に堪えられなかった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
だが、どんな天才でも秀才でも、歌人うたよみや、書家では、今日の社会が、その天稟てんぴんたたえもせず、用いもしないのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをなまじつかいま歌人うたよみたのんでつくらしたところでありふれた、初日はつひうたなどは感心かんしんしないぜ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
串戯じょうだんじゃないまったくです、私は基督教になっても可い。今のその根岸の歌人うたよみに降伏をして、歌の弟子になっても構わん。どうかして治してやりたいじゃありませんか。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愛するのに不思議はないが、僧侶ばうずといふ身分に対してちと不都合だと思われるむきは、どうか成るべく内聞にして置いて欲しい。道命も名僧だし、和泉式部も聞えた歌人うたよみの事だから。
祖父の母は歌人うたよみで、千町ちまちといったというのだが、千町とは聴きあやまりであったのか、千蔭ちかげの門人にその名はないという。祖父も手跡はよく、近所の町の祭礼の大幟おおのぼりなど頼まれて書いた。
「われらの知ったことではない。歌人うたよみ文書ふみかきには、平家の世であろうが、源氏の世であろうが、春にかわりはなし、秋に変りはなし、いつの世にも、楽しもうと思えば楽しめる」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて八九年前になります——山つづきといってもい——鶯谷にも縁のありますところに、大野木元房おおのきもとふさという、歌人うたよみで、また絵師えかきさんがありまして、大野木夫人、元房の細君は
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東京とうきやうにも歌人うたよみ大家先生たいかせんせい澤山たくさんあれど我等われらのやうに先生せんせい薫陶くんたう大島小學校おほしませうがくかうもんまなさふらふものならで、我等われら精神感情せいしんかんじやう唱歌しやうかうたいだるものるべきや、はなは覺束おぼつかなく存候ぞんじさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
生活力のない歌所の歌人うたよみたちは、それに対して、不平の不の字もつぶやけなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……で、この歌人うたよみさんとは、一年前、結婚をしたのでしたが、お媒酌人なこうども、私どもの——先生です。前から、その縁はあるのですけれども、他家よそのお嬢さん、毎々往来をしたという中ではありません。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)