極印ごくいん)” の例文
丸にワの字は出羽様の極印ごくいんが打ってあるとも知らずに、それからただちに辻駕籠を拾って六郷の渡船場まで走らせ、川を越せば川崎
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
身扮みなりもなか/\洒落れたもので、無駄飯を食ふ人間の淺ましい贅澤さが、死の極印ごくいんされてまでも、人の眉をひそめさせます。
それにとうにするはずの殉死をせずにいた人間として極印ごくいんを打たれたのは、かえすがえすも口惜しい。自分はすすぐことの出来ぬ汚れを身に受けた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その切込みはまだそんなに深くはありませんでしたけれど、退引のっぴきならぬ破牢の極印ごくいんであることは確かであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
金物の彫りの方では、唐草からくさ地彫じぼり、唐草彫り、つる彫り、コックイ(極印ごくいん)蔓などで地はいずれも七子ななこです。
その古い色を見ると、木村の父のふとぱらな鋭い性格と、波瀾はらんの多い生涯しょうがい極印ごくいんがすわっているように見えた。木村はそれを葉子の用にと残して行ったのだった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
その矢先きへ、綾衣のひたいに剣難の極印ごくいんが打たれたと聞いては、彼がおびえたのも無理はなかった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
呼出よびいだされ一通り尋ねらるゝにわかい者左吉重次郎千次郎の三人手負ておひの趣き又盜まれし千兩は一昨日蓮池はすいけ御藏より受取候金子にて殘らず私し方の極印ごくいんを打置候と見本の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
問屋筋のかたぎのうちでは、大きな、極印ごくいんのような判をベタベタと押した。実印も黒色くろだった。
つまり下請したうけ制度で、請負配下が鋳造した判金を、金銀改役後藤庄三郎ごとうしょうざぶろうが検定極印ごくいんをおして、はじめて通用することになっていたが、元禄八年に、幕府の財政の窮迫を救うため
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
……途端に、その界隈、くッきりと、影あざやかに「夏」の極印ごくいんがうたれたのである。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
守宮やもりの血でうで極印ごくいんをつけられるまでも、膝に此の薬を塗られてうしよう。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それ故に派手は品質の検校けんこうが行われる場合には、往々趣味の下劣が暴露されて下品の極印ごくいんを押されることがある。地味は原本的に消極的対他関係に立つために「いき」の有する媚態をもち得ない。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
「あれは正月の手間の払い残りがあったのをくだすったんだ。ホラ見ろ、丸にワの字、松平出羽守様の極印ごくいんが打ってあらア」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
極印ごくいん入りの五千兩の金は、うつかり隱せないが、千兩箱の中へなら、極印入りでも隱せる、千兩箱の中に小判を隱す、——うまい事を考へたものだな
うけに來た時十三兩三分の金はよく改めしなるべし何ぞ極印ごくいんにても有しやどうぢやと申さるゝに久兵衞イヤ何も極印は御座なく候へどもかれの身分にて一夜のうちに金の出來るはずは是なしと同じ事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
公然幕府の御用壮士と極印ごくいんされることを本意なりとせざるものがある
そしたら、男の心中しんじゅう極印ごくいん打ったも同じ事、喜んだかていのどす。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「改め役へ差上げて極印ごくいんを打つ前の、吹き立ての小判ばかり百両包みました。あれを一枚でも使えば足が付きます」
なんでも、東海道三島の宿で、浅草三間町の鍛冶屋富五郎てエ野郎が飯盛めしもりの女を買って金をやったとこがお前、その小判がまえから廻状のまわっていた丸にワの字の極印ごくいんつきだからたまらねえや。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さめと存じ候處其金は目印めじるし極印ごくいんありしとは夢にも存じ申さず小兵衞がつかひ候より事あらはれ斯の仕合しあはせに相成候段是ぞ天罰てんばつにて恐れ入奉り候と少しも未練みれんなく一々白状に及びける故大岡殿神妙しんめうなりと申され又小兵衞に向はれ只今仁左衞門が申に相違なきやと尋ねらるゝに小兵衞も是非ぜひなしと覺悟かくご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「改め役へ差上げて極印ごくいんを打つ前の、吹き立ての小判ばかり百兩包みました。あれを一枚でも使へば足が付きます」
出して居るといふことはあるまい、裏側には極印ごくいんがあるから、丁寧に一枚づつ表側を上にして並べ、俺が見て居る前でザクザクとやつたんだ、裏側の極印を見せない手品だ
「四文錢は額に當つたに違ひない、極印ごくいんを打つてあるから、めぐり逢へばきつとわかるよ」
その二千兩の小判には一々極印ごくいんが打つてありますから、其の儘に通用しませんが、兎も角神津右京に取つては家にも身にも代へ難き大事件で、此の二十日迄に手に戻らなければ
その二千両の小判にはいちいち極印ごくいんが打ってありますから、そのままに通用しませんが、ともかく神津右京にとっては家にも身にも代え難き大事件で、この二十日までに手に戻らなければ
「金座の後藤が、勘定奉行へ送つて極印ごくいんを打つて貰ふ、吹き立ての小判が六千兩、常盤橋ときはばし外で、車ごと奪られた、其時人足が二人、役人が一人斬られたが、これもまた品も下手人も、現れない」
お霜は極印ごくいんのない小判百兩を平次の前へ押並べます。
「迷子札の極印ごくいんさ」