昼寐ひるね)” の例文
それでは今日限り昼寐ひるねをやめて、活動の割前が払へるかと云ふと、それは困難である。自分は今活動の中心に立つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
昼寐ひるねの夜具を敷きながら墓地の方を見下すと、いつも落葉に埋れたまま打棄ててある古びた墓も今日は奇麗に掃除されて、花や線香が供えられている。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
家には妻いぎたなく昼寐ひるねの夢まだ覚めやらず、ふところにも背にも幼稚おさなき子ら二人ばかりも横竪に並臥なみふしたり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
昼寐ひるねして花半日を無駄むだにせし
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
昼寐ひるね夜具やぐきながら墓地ぼちはう見下みおろすと、いつも落葉おちばうづもれたまゝ打棄うちすてゝあるふるびたはか今日けふ奇麗きれい掃除さうぢされて、はな線香せんかうそなへられてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
その頃の健三はうちへ帰ると甚しい倦怠けんたいを感じた。ただ仕事をした結果とばかりは考えられないこの疲労が、一層彼を出不精にした。彼はよく昼寐ひるねをした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
諸子会すあるじ昼寐ひるねまだめず
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
此劇烈な活動そのものがりも直さず現実世界だとすると、自分が今日迄の生活は現実世界に毫も接触してゐない事になる。洞※峠で昼寐ひるねをしたと同然である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
主人あるじはいつぞや怪しき昼寐ひるねの夢から引込んだ風邪のとこ今宵こよいもまだまくらについたまま、あいも変らずおのが戯作げさくのあれこれをば彼方かなたを一、二枚此方こなたを二、三枚と読返していた折から
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
我生の今日の昼寐ひるねも一大事
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「今時分じぶんが丁度訪問にい刻限だらう。きみ、又昼寐ひるねをしたな。どうも職業のない人間は、惰弱で不可いかん。君は一体何のためうまれてたのだつたかね」と云つて、寺尾は麦藁むぎわら帽で
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
昼寐ひるねせる妻もしからず小商こあきない
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)