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撚
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ひね
ふりがな文庫
“
撚
(
ひね
)” の例文
お玉は小さい紙入を
黒襦子
(
くろじゅす
)
の帯の間から出して、幾らか紙に
撚
(
ひね
)
って女中に遣って置いて、駒下駄を引っ掛けて、格子戸の外へ出た。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それをフアウヌスは傍の柱に寄り掛かつて、非常に落ち着いた態度で、右から左へと見比べて、少し伸びた髭を
撚
(
ひね
)
つてゐる。
クサンチス
(新字旧仮名)
/
アルベール・サマン
(著)
寒月は羽織の紐を
撚
(
ひね
)
ってにやにやする。吾輩は主人のあとを付けて垣の崩れから往来へ出て見たら、真中に主人が手持無沙汰にステッキを突いて立っている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すると主人は
袂
(
たもと
)
の底をがさごそと
探
(
さが
)
していて紙の
撚
(
ひね
)
ったのを二つ取り出し、一つずつ二人にくれた。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
障子は隔ての関を
据
(
す
)
えて、松は心なく
光琳風
(
こうりんふう
)
の影を宿せり。客はそのまま目を転じて、下の谷間を打ち見やりしが、耳はなお曲に
惹
(
ひ
)
かるるごとく、
髭
(
ひげ
)
を
撚
(
ひね
)
りて身動きもせず。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
▼ もっと見る
土間
(
どま
)
へおりて
爪立
(
つまだ
)
つようにして
瓦斯
(
ガス
)
のねじを
撚
(
ひね
)
り、それにマッチの火を移した。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
松吟庵
(
しょうぎんあん
)
は
閑
(
かん
)
にして
俳士
(
はいし
)
髭
(
ひげ
)
を
撚
(
ひね
)
るところ、五大堂は
寂
(
さ
)
びて
禅僧
(
ぜんそう
)
尻
(
しり
)
をすゆるによし。いわんやまたこの時金風
淅々
(
せきせき
)
として天に
亮々
(
りょうりょう
)
たる
琴声
(
きんせい
)
を聞き、細雨
霏々
(
ひひ
)
として
袂
(
たもと
)
に
滴々
(
てきてき
)
たる
翠露
(
すいろ
)
のかかるをや。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一体このテントはヤクの毛で拵えたもので、土人がヤクの毛を口でくわえて手で延ばしつつ
撚
(
ひね
)
りつつ糸にしてそれを織るのでございます。で、その布を縫い合せて家の形のようなものを拵える。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ここにもらしてはならぬ一事は、彼が強大な体力を有していて、徒刑場のうちの
何人
(
なにびと
)
も遠く及ばなかったことである。労役において、
錨鎖
(
ケーブル
)
を
撚
(
ひね
)
りまたは
轆轤
(
ろくろ
)
を巻くのに、彼は四人分の価値があった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
美人は
紙縷
(
こより
)
を
撚
(
ひね
)
りて、煙管を通し、
溝泥
(
どぶどろ
)
のごとき脂に
面
(
おもて
)
を
皺
(
しわ
)
めて
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
巡査
(
じゆんさ
)
は
呼吸
(
いき
)
で
霧
(
きり
)
のやうに
少
(
すこ
)
し
霑
(
ぬ
)
れた
口髭
(
くちひげ
)
を
撚
(
ひね
)
りながら
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「見た事も聞いた事もないに、これだなと認識するのが不思議だ」と
仔細
(
しさい
)
らしく髯を
撚
(
ひね
)
る。「わしは
歌麻呂
(
うたまろ
)
のかいた美人を認識したが、なんと
画
(
え
)
を
活
(
い
)
かす工夫はなかろか」
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
主人は鼻の下の黒い毛を
撚
(
ひね
)
りながら吾輩の顔をしばらく
眺
(
なが
)
めておったが、やがてそんなら内へ置いてやれといったまま奥へ
這入
(
はい
)
ってしまった。主人はあまり口を聞かぬ人と見えた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
撚
漢検準1級
部首:⼿
15画
“撚”を含む語句
紙撚
観世撚
小撚
撚糸
觀世撚
勧進撚
撚合
撚揚
撚目
撚紐
漫撚
片撚
紙撚網
逆撚