さずか)” の例文
正に春立りっしゅんならんとする時、牡丹に雪のずいといい、地蔵菩薩のしょうといい、あなたはさずかりものをしたんじゃないか、たしかにそうだ、——お誓さん。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不憫ふびんで、そして、いま「男だ」と云ったばかりの薫の声が遠いむかしから自分にさずかっていた決定的な男性の声のような頼母たのもしさを感じてうれし泣きに泣けて来た。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
でもね、私達には子供がなかったので、神様からさずかった本当の娘だと思って、警察の手続てつづきもすませ、立派にお前をもらって来て、私達はたんせいをこらしたのさ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
数馬はがみでござりまする。しかしあの試合に勝って居りましたら、目録をさずかったはずでございまする。もっともこれは多門にもせよ、同じ羽目はめになって居りました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「それでもあなた、この葉之助は、さずかではございませぬか」お石はむせびながらまた云い出す。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わたくしきているときから霊視れいしがきくようになり、いまではすわったままでなんでもえるともうしますと、『そなたはなん便利べんりなものを神様かみさまからさずかっているであろう!』と良人おっとたいへんにおどろきました。
フランシスは今日教友のレオに堂母ドーモで説教するようにといった。レオは神を語るだけの弁才を神からさずかっていないとこばんだ。フランシスはそれなら裸になって行って、体で説教しろといった。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
術をさずかった上は、この上もない泥坊になれるわけでした。
泥坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あたりをしずかに、おさえるばかり菊のかおりで、これをに持って参って、本堂に備えますと、かわりの花をさずかって帰りますね。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「小児は影法師もさずかりません。……ただあやかりとう存じます。——写真は……拝借出来るのでございましょうか。」
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)