挽回ばんかい)” の例文
自由宗教より来る熱誠と忍耐と、これに加うるに大樅おおもみ小樅こもみの不思議なる能力ちからとによりて、彼らの荒れたる国を挽回ばんかいしたのであります。
それとも党勢不振の際、誓って落日を中天ちゅうてん挽回ばんかいせずんばやまずと云う意気込みで、あんなに横風おうふうに顔一面を占領しているのか知らん。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おそらく大勢挽回ばんかいのためであろう、さもなければ、かねて通謀している大名と、江戸でなに事か起こすためかもしれない。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
受験準備へ食い込む分を人生観察で挽回ばんかいしようと思って、診察にも成る可く立ち合うことに努めた。学校も学校、小説家修行も小説家修行である。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
徳川幕府の頽勢たいせい挽回ばんかいし、あわせてこの不景気のどん底から江戸を救おうとするような参覲交代さんきんこうたいの復活は、半蔵らが出発以前にすでに触れ出された。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どうも世間の教育を受けた人の多数は、こんな物ではないかと推察せられる。無論この多数の外に立って、現今の頽勢たいせい挽回ばんかいしようとしている人はある。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「今さら、お耳に入れても、この挽回ばんかいはつきませぬ。いたずらに、御不快と焦躁しょうそうを加えるまでのことと、実は折を見て、お話し申すつもりでおりました」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父が株券などに手を出して一時は危くなった家産をもと通りに挽回ばんかいすることの出来たのも、大抵自分が十代から二十歳はたちの初へかけての気苦労の結果であった。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
東京でもいろいろのことをやって味噌みそをつけて行った父親は、製糸事業で失敗してから、それを挽回ばんかいしようとして気を焦燥あせった結果、株でまた手痛くやられた
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
父がくなり、妹たちがようよう成人する頃には、既に婿むこを迎えて子持ちになってい、夫と共に傾きかけた家運の挽回ばんかいに努めると云う風なめぐり合せになったりして
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかしてこの衰勢を挽回ばんかいせしめたるものは実に役者絵中興の祖と称せらるる勝川春章かつかわしゅんしょうなりとす。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
... 挽回ばんかいせんのみ。四万々生霊を水火塗炭とたんの中に救はんのみ。けだし大和民族の天職は殆ど之より始まらんか。」思うに「二十世紀の最大問題はそれ殆ど黄白人種の衝突か。」しこうして
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
つね/″\世を恨み人を恨みながら家名挽回ばんかいの志は妙な方に持って行った。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
財産を挽回ばんかいしようとする元気もなくしてしまった。
しかもこの発見はデンマーク国の開発にとりては実に絶大なる発見でありました、これによってユトランドの荒地挽回ばんかいの難問題は解釈されたのであります。
到底、三人の叔父に横領された遺産の大には、及びもしないが、それでも、将門はひとまず、家運を挽回ばんかいした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幕府の頽勢たいせい挽回ばんかいしうるか、どうかは、半蔵なぞのように下から見上げるものにすら疑問であった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
四十過ぎての蹉跌さてつ挽回ばんかいすることは、事実そうたやすいことでもなかったし、双鬢そうびんに白いものがちかちかするこの年になっては、どこへ行っても使ってくれ手はなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
破格の好意なのであって、それは一つには、妙子が全くの「とうちゃん」でありながらくろうとに交って精進する熱心さにほだされたせいもあるが、一つには山村舞の頽勢たいせい挽回ばんかいするには
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
信用を挽回ばんかいする積りだったけれど、豊子さんはナカ/\もって理想が高い。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今度は食気くいけがついて、それから人格を認められていない事を認識して、はなはだつまらなくなって、つまらなくなったと思ったら坑夫の同類が出来て、少しく頽勢たいせい挽回ばんかいしたと云うしだいになる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
敗勢になりながら、島津の兵はじつによく戦った、しかしいかに善防したところでもはや大勢を挽回ばんかいすることはできない、ついに馬じるしを折り記章を捨てて牧田から西南のほうへと退却をはじめた。
青竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
息子の医者の代にはほぼ家運を挽回ばんかいするようになった。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
今は挽回ばんかいの工夫もない。全面的な敗北だ。関平と廖化はやむなく樊城はんじょうへ奔った。そして関羽の前へ出るや
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
英艦応接の儀は浪華港なにわみなとへ相回し、拒絶談判これあるべく、万一兵端を開き候節は大樹自身出張、万事指揮これあり候わば、皇国の志気挽回ばんかいの機会にこれあるべく思し召され候。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それが、尊氏をして、わずか二た月のまに、あのような挽回ばんかいをさせたものにございましょう。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たといその制度の復活が幕府の頽勢たいせい挽回ばんかいする上からも、またこの深刻な不景気から江戸を救う上からも幕府の急務と考えられて来たにもせよ、繁文縟礼はんぶんじょくれいが旧のままであったら
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、玄徳を、座上に請じて、沮授に謝罪の礼をとらせ、そのまま敗戦挽回ばんかいの策を議し始めた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
始めや途中のことなら一時の変ですから、挽回ばんかいの工夫もあり、立て直しもききますが、今日の変は、要するに、丞相孔明がかれた後の万事の帰着です。天数の帰結です。もういけません。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家職と勢力の挽回ばんかい。そう二つが目標であることはいうまでもなかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵の退路を遮断すれば、挽回ばんかい端緒たんしょを得べしとなした。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敗地を挽回ばんかいしようとしているのだった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、挽回ばんかいにあせった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)