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ふつ
忌々しさうに頭を
振て、急に
急足で
愛宕町の
闇い狭い
路地をぐる/\
廻つて
漸と
格子戸の小さな二
階屋に「小川」と薄暗い
瓦斯燈の
点けてあるのを
発見けた。
鉛の
重かとおもふ
心持、
何か
木の
実でゞもあるか
知らんと、二三
度振て
見たが
附着いて
居て
其まゝには
取れないから、
何心なく
手をやつて
掴むと、
滑らかに
冷りと
来た。
肱をばさりと
振たけれども、よく
喰込んだと
見えてなかなか
放れさうにしないから
不気味ながら
手で
抓んで
引切ると、ぶつりといつてやう/\
取れる
暫時も
耐つたものではない