指南しなん)” の例文
同じ家中に剣術指南しなん番で金丸かなまる湛左衛門という者がいて、これが銀之丞の妹春枝を嫁に望んできたが、良からぬ人物なので断ったところ
武道宵節句 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
浄瑠璃じょうるりの言葉に琴三味線の指南しなんして「後家ごげみさおも立つ月日」と。八重かくてその身の晩節ばんせつまっとうせんとするの心か。我不われしらず
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
うかれ車座のまわりをよくする油さし商売はいやなりと、此度このたび象牙ぞうげひいらぎえて児供こどもを相手の音曲おんぎょく指南しなん、芸はもとより鍛錬をつみたり、品行みもちみだらならず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「父はもと甲州二十七しょうの一人であったが、拙者のだいとなってからは天下の浪人ろうにん大津おおつの町で弓術きゅうじゅつ指南しなんをしている山県蔦之助ともうすものじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さつし是々御浪人我等は此樣に見苦しき身形みなりゆゑ定めて不審いぶかしき者とおぼされんが必ず御心配なさるに及ばず某は讃州さんしう丸龜まるがめに住居なす後藤半四郎秀國ひでくにとて劔道けんだう指南しなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
壮烈をきわめたケンカ指南しなんであった。
安吾史譚:05 勝夢酔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
堂上方の式事は、誰にもせよ、そうわきまえているはずもない。例年の御馳走人は、いずれも、高家吉良上野介こうけきらこうずけのすけ指南しなんをうけて、とどこおりなく、相勤めておる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立出ながの旅中も滯溜とゞこほりなく讃州丸龜へ歸りてもとの如く無刀流劔道の指南しなんをぞ爲して居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……御辺の祖父にあたらるる明石あかし正風どのには、近衛家のご先代にも、いまの前久卿がお若いうちにも、歌道の指南しなんとして常におやかた伺候しこうせられていたそうな
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
重四郎とよび今年ことし二十五歳にて美男びなんいひこと手跡しゆせきよく其上劔術早業はやわざの名を得し者なるが父重左衞門より引續ひきつゞき手跡の指南しなんをして在ける故彼の穀屋平兵衞の悴平吉も此重四郎にしたがもつぱ筆道ひつだう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)