拙劣せつれつ)” の例文
拙劣せつれつな変調装置を使うとか、マイクロホンがよくないとか、増幅装置ぞうふくそうちがうまいところで働いてないとか、そういう素因そいんによって音声はゆがめられる。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ズイと入ると、中は空っぽも同然、地獄の活人形に朝の陽が射し込んで、何となく不気味なうちにも、拙劣せつれつな細工がかもし出す、滑稽こっけいな趣があります。
二人は巧みにやってるつもりだったが、実はごく拙劣せつれつだった。ある日、ミンナが不都合なほどクリストフに近寄って話していると、不意に母がはいって来た。
外國語ぐわいこくごやくして日本語にほんごとするのは勿論もちろん結構けつこうであるが、そのやく適當てきたうでなかつたり、拙劣せつれつであつたり不都合ふつがふなものが隨分ずゐぶんおほい、あらたに日本語にほんごつくるのであるから
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
富家ふかにありてはただ無知盲昧もうまい婢僕ひぼくに接し、驕奢きょうしゃ傲慢ごうまんふうならい、貧家にありては頑童がんどう黠児かつじに交り、拙劣せつれつ汚行おこうを学び、終日なすところ、ことごとく有害無益のことのみ。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
其他そのほかいづれも断片だんぺんで、文句もんくもとより拙劣せつれつたゞおどるまゝにペンをはしらせたものとしかえぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
室内を歩きながら、突然立ち止まって眼をつぶったり柱につかまったりする。少し慇懃いんぎんな手紙を書くには巻紙へ毛筆でしたためるのだが、字体がひどく拙劣せつれつになりつつある。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
抱一ほういつの画、濃艶のうえん愛すべしといへども、俳句に至つては拙劣せつれつ見るに堪へず。その濃艶なる画にその拙劣なる句のさんあるに至つては金殿に反古ほご張りの障子を見るが如く釣り合はぬ事甚だし。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そうして、はなはだ拙劣せつれつな、無能きわまる一法を案出した。あわれな窮余の一策である。私は、とにかく、犬に出逢うと、満面に微笑をたたえて、いささかも害心のないことを示すことにした。
ぼくは懸命けんめいになればなるほど拙劣せつれつなのを知りながら「実はあなたが昨夜、熊本さんについて見たことを、あなたの胸だけにしまっておいてもらいたいのです」と言いかければ、彼は不愉快ふゆかいそうにかん高く
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ズイと入ると、中は空つぽも同然、地獄の活人形に朝の陽が射し込んで、何となく不氣味なうちにも、拙劣せつれつな細工が釀し出す、滑稽なおもむきがあります。
地球に拙劣せつれつな着陸をして一命をとすよりはいいけれど、行方も見当がつかないのでは仕方がない。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ君が容易に依頼者を満足するの弊として往々粗末なる杜撰ずさんなる陳腐なる拙劣せつれつなる無趣味なる画を成す事あり。しかれども依頼者は多く君の雷名らいめいを聞いて来る者画の巧拙こうせつはこれを鑑別するの識なし。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
作は拙劣せつれつで、まず田舎の床の間でなければ通用しないものでしょう。引くり返して裏を見ると、それでも、勢州住人治郎兵衛作とめいが入っております。
直ぐ処分するということは、およそ泥棒と名のつく人間の誰でもやるであろうところの平々凡々の手だ。そして同時に拙劣せつれつな手でもある。——私はそんな手は採用しなかった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)