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打仰
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うちあふ
籠は
上に、
棚の
丈稍高ければ、
打仰ぐやうにした、
眉の
優しさ。
鬢の
毛はひた/\と、
羽織の
襟に
着きながら、
肩も
頸も
細かつた。
唯継は例の
倨りて天を
睨むやうに
打仰ぎて、杖の
獅子頭を
撫廻しつつ、
少時思案する
体なりしが、やをら
白羽二重のハンカチイフを
取出して、片手に
一揮揮るよと見れば
鼻を
拭へり。
アヽと
出る
溜息を
噛しめる
齒の
根寒さにふるひて
打仰ぐ
面を
「さればさ、
先刻から
降らぬから、お
天氣でござらう。」と
言ひつゝ
空を
打仰ぎて
裀の上に
舁下されし貫一は
頽るる
体を机に支へて、
打仰ぎつつ微吟せり。
と
夫人は
聲を
沈めたが、
打仰ぐやうに
籠を
覗いた。
貫一は身を
回して
臂枕に
打仰ぎぬ。