才媛さいえん)” の例文
もっとも面白い一例をあげると、伊兵衛には佐和さわと呼ぶ妹が一人あった。とびぬけた美人とは云えないが、家中では才媛さいえんの評が高い。
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「しかしこれからってのは有難いな。いながらにして花嫁花婿の記事が取れる。堀尾君、お嫁さんは何処出身の才媛さいえんだい?」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかり、文金たかしまだのお嬢さんは、当時中洲辺に住居すまいした、月村京子、雅名を一雪いっせつといって、実は小石川台町なる、上杉先生の門下の才媛さいえんなのである。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたしの親友のレスリーは、上流家庭で育った美貌びぼう才媛さいえんと結婚した。実のところ、女のほうには財産がなかったが、わたしの友人はたいへん金持ちだった。
(新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
安土あづちの大奥では、まだ十三、四歳の彼女をさして、早くも、将来の才媛さいえんのようにたたえた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この、后の宮の御側には、平安朝の後宮こうきゅうにもおとらぬ才媛さいえんが多く集められた。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
まして此頃は賢女けんじょ才媛さいえん輩出時代で、紫式部やら海老茶式部、清少納言やら金時大納言など、すばらしい女が赫奕かくえきとして、やらん、からん、なん、かん、はべる、すべるで、女性にょしょう尊重仕るべく
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼の亡くなった妻のキセ子というのは元来、彼の住んでいる村の村長の娘で、この界隈かいわいには珍らしい女学校卒業の才媛さいえんであったが、容貌ようぼうは勿論のこと、気質までもが尋常じんじょう一様の変り方ではなかった。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
有名な才媛さいえんクララもまた夫と共にその喜びをわかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
身分のたかい家ばかりではなく、同格より下からも、才媛さいえんのきこえの高いものをすすめてきた、けれどもなにゆえか源七郎はうんと云わなかった。
青竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「新郎清太郎君は商科大学卒業の秀才にして海軍主計監河野信広氏の令甥れいせい、新婦秀子さんは三輪田女学校出身の才媛さいえんにして獣医学博士烏森進氏の令姪れいてつ……」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今更贔屓分ひいきぶんでいうのではありません、——ちょッ、目力めか(助)編輯へんしゅうめ、女の徳だ、などと蔭で皆憤懣ふんまんはしたものの、私たちより、一歩ひとあしさきに文名をせた才媛さいえんです、その文金の高髷たかまげの時代から……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むかしにも紫式部むらさきしきぶ清少納言せいしょうなごんなどという才媛さいえんがあった。いまの世からも、女性の偉いものが出て欲しい。そもじは天正てんしょうの紫式部になれ、今の世の清少納言になってみい。そうはげましてくださいました
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明治の文壇に、才媛さいえんの出身者を多くだしたのは麹町こうじまちの富士見小学だときいております。岡田八千代おかだやちよ女史も、国木田治子くにきだはるこ女史も富士見小学で学ばれました。楠緒女史もお二人よりは、早くの出身でした。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
保持の琴どのは才媛さいえんだというようなうわさを耳にもし、また自分がみめよく生れついていないという悲しい自覚もあって、少しものごころのつく頃からは
日本婦道記:桃の井戸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
奥様はお姫様ひいさまたちが女親に似てみんな才媛さいえんだのに、若様たちはどういうものか不成績でこまるとうったえた後
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ことに妙子様は才媛さいえんで、お母様のご鍾愛しょうあいをほしいままにしている。お部屋もお母様のおとなりだった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
歌会、茶会、謡曲の集いなどがしばしば催され、ずいぶんすくれた才媛さいえんもあらわれた。
日本婦道記:梅咲きぬ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
大した鈍物でないという証拠を見せれば満足してくれる。花婿は○○大学出身の秀才、花嫁は府立第○女学校卒業の才媛さいえん、その程度で宜いのだ。僕という人間は元来お気に召している。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
次に花嫁道子さんはともの旧家奥田三郎兵衛氏の長女、目下女子大学在学中の才媛さいえんであります。披露式上の才媛は、いや、花嫁は、必ず才媛でありますが、道子さんは実際の才媛であります。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「新郎芳夫君は東京市市会議員畑孫一郎氏の長男、慶応大学卒業の秀才にして同大学少壮教授、新婦絹子さんは静岡県浜松在の素封家そほうか大内長平氏の長女、浜松高等女学校卒業の才媛さいえんにして現代的美貌の持主なり」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)