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手筥
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てばこ
ふりがな文庫
“
手筥
(
てばこ
)” の例文
総縫の
裲襠
(
うちかけ
)
に、三つ葉葵の紋を散らした
手筥
(
てばこ
)
、相沢半助思わずハッと頭を下げるはずみに、乗物の扉はピシンと閉ってしまいました。
新奇談クラブ:05 第五夜 悪魔の反魂香
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、家に持ち伝へた
螺鈿
(
らでん
)
の
手筥
(
てばこ
)
や白がねの香炉は、何時か一つづつ失はれて行つた。と同時に召使ひの男女も、誰からか暇をとり始めた。
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
信長の耳にはいって、信長の前で、小色紙に即興の和歌をしたためて見せ、美しい菓子と
手筥
(
てばこ
)
を褒美にもらったこともある。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
半襟は
新宿御苑
(
しんじゅくぎょえん
)
の蘭の花を染めた珍しいもので、幾十年を経てすっかり色はあせながら、今も
手筥
(
てばこ
)
の中にあります。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
何か日本の特産品で彼方の人に喜ばれそうな物はと頭を
捻
(
ひね
)
った末、ふと
服部
(
はっとり
)
の地下室で
螺鈿
(
らでん
)
の
手筥
(
てばこ
)
を見付けたので、それを幸子からの進物とすることにきめ
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
庇厨子
(
ひさしずし
)
の
手筥
(
てばこ
)
の中から、一枚の紙を取って、「これを読んでみろ」と夫人に渡した。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ところが、その九月になって、あの方がお出かけになられた跡に
手筥
(
てばこ
)
が置いてあったので、何の気なしに開けて見たら、どこかの女のもとへ送るおつもりだったらしい御文がしのばせられてあった。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
一つずつ無の
手筥
(
てばこ
)
に入れられるのさ。
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
その枕元に睡眠薬と
手筥
(
てばこ
)
があった。
黒白ストーリー
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
平民殿様はすっかり悦に入って、
手筥
(
てばこ
)
の中から、大錦一枚刷の八百屋お七——国広えがく——と署名のあるのを出して見せました。
奇談クラブ〔戦後版〕:02 左京の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
散らかって方丈へなだれ込んだ手下たちは、やがて戻ってきて、範宴の
室
(
へや
)
から一箇の
翡翠
(
ひすい
)
の
硯屏
(
けんぺい
)
と
堆朱
(
ついしゅ
)
の
手筥
(
てばこ
)
とを見出してきただけであった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「この六助は
蒔絵師
(
まきえし
)
だった」と去定は低い声で云った、「その道ではかなり知られた職人だったらしい、紀伊家や尾張家などにも、
文台
(
ぶんだい
)
や
手筥
(
てばこ
)
が幾つか買上げられているそうだが、妻も子もなく、 ...
赤ひげ診療譚:02 駈込み訴え
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いや、私もよく知つて居ります。その
手筥
(
てばこ
)
は廊下を通るとよく見えます、それに、どうかすると、手筥は開けつ放しになつて居りますから」
銭形平次捕物控:296 旅に病む女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「そうだ。夜も明けやすうなったし、
転寝
(
うたたね
)
には、よい季節よ。……おう、彼方の千鳥棚にある
手筥
(
てばこ
)
をかせ。枕に……」
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手筥
(
てばこ
)
だの、
抽斗
(
ひきだし
)
だの、鏡立てだの、手あたり次第に掻き廻してみた。しかし、金はみつからなかった。あらかじめこういう悪心は行き届いている女である。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御金藏の鍵は三つ、一つは殿御
手筥
(
てばこ
)
に、一つは福島樣手許に、一つは兄が持つて居りましたので、お互に疑ひ合ひ、見張り合ふのも無理はなかつたのでございます
銭形平次捕物控:076 竹光の殺人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ていねいに書簡をたたんで、押しいただいて傍らの
手筥
(
てばこ
)
へ納めたが、このときも信玄は、一言の感動も洩らさなかった。いうべきことばもなかったと思われる。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つけて搜すと、わけもなくお寅の
手筥
(
てばこ
)
から出て來た
銭形平次捕物控:169 櫛の文字
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
修蔵は、両手で
懐中
(
ふところ
)
を抱えた。その肩を、伝右衛門は思わずかっとして蹴った。お麗の大事にしている
手筥
(
てばこ
)
が、転がった。銀の
平打
(
ひらうち
)
だの、べっ甲の
櫛
(
くし
)
だのが散らばった。
べんがら炬燵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「親分、——あの
手筥
(
てばこ
)
が變ぢやございませんか」
銭形平次捕物控:169 櫛の文字
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「柳沢との往復の文書が、その
交
(
ちが
)
い棚のうえの
手筥
(
てばこ
)
から、二、三通出て来たほかは——」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これ見給え、といわぬばかりに、手燭と共に、
法相華文蒔絵
(
ほうそうげもんまきえ
)
の
手筥
(
てばこ
)
がおいてある。筥には青銅の座金もあるが、鍵はかけてない。ぼてっと湿気をおびた一封の包み
奉書
(
ほうしょ
)
が中にあった。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
蝶貝
(
ちょうがい
)
の
模様
(
もよう
)
のついた
手筥
(
てばこ
)
があるだろう。あれを持って来ておくれでないか」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
老女の水瀬が退がってゆくのを見届けてから、御方は、そこに残されてある、銀紙包みの秘薬をとりあげ、ちょっと香を改めてから、
蝶貝象嵌
(
ちょうがいぞうがん
)
の
手筥
(
てばこ
)
の底へ、心の笑みと一緒にひそめてしまわれた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いつもの、お
手筥
(
てばこ
)
の
薬嚢
(
やくのう
)
から一錠取って参りました」
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
筥
漢検1級
部首:⽵
13画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手巾
手繰
手許
手向
手綱
手際
手燭