憔悴せうすゐ)” の例文
其処そこ婿君むこぎみが、紋着もんつきはかまながら、憔悴せうすゐした寝不足ねぶそく血走ちばしり、ばう/\がみやつれたのが、弔扎てうれいをうけにえたのである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
栗原は悄気しよげてゐた。彼は逢ふたびに元気がなく、憔悴せうすゐして行くやうだ。おちつきもなく何かに脅えた臆病な眼色をしてぼそぼそとものを云ふ。
現代詩 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
しかし今や、手を頬に、指を唇にあてゝ、彼は考へてゐた。その手も顏と同じやうに憔悴せうすゐして見えるのが、私の心を打つた。
五日いつかの朝、僕の家にきたる。いまだ孫娘のを知らずといふ。意気な平生のお師匠ししやうさんとは思はれぬほど憔悴せうすゐし居たり。
かれ什麽どんなをしんでもかますなかつてくのをふせぐことは出來できない。しか寡言むくちかれいたづらに自分じぶんひとりみしめて、えずたゞ憔悴せうすゐしつゝ沈鬱ちんうつ状態じやうたい持續ぢぞくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さなきだにかれ憔悴せうすゐしたかほ不幸ふかうなる内心ないしん煩悶はんもんと、長日月ちやうじつげつ恐怖きようふとにて、苛責さいなまれいたこゝろを、かゞみうつしたやうにあらはしてゐるのに。其廣そのひろ骨張ほねばつたかほうごきは、如何いかにもへん病的びやうてきつて。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)