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いううつ
ふりがな文庫
“
憂欝
(
いううつ
)” の例文
血腥
(
ちなまぐさ
)
い事件の豫感に、平次は
一寸
(
ちよつと
)
憂欝
(
いううつ
)
になりましたが、直ぐ氣を變へて、ぞんざいに顏を洗ふと、
鬢
(
びん
)
を撫で付け乍ら家へ
入
(
はひ
)
つて行きました。
銭形平次捕物控:097 許婚の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それも空虚な時間を過しかねる彼の気弱さからだと思はれたが、夫婦生活の
憂欝
(
いううつ
)
と
倦怠
(
けんたい
)
から解放された気安さだとも解釈されない事もなかつた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
實際
(
じつさい
)
、
運
(
うん
)
のつかない
時
(
とき
)
と
來
(
き
)
たらこれほど
憂欝
(
いううつ
)
な
遊
(
あそ
)
びはないし、
逆
(
ぎやく
)
に
運
(
うん
)
の
波
(
なみ
)
に
乘
(
の
)
つて
天衣無縫
(
てんいむほう
)
に
牌
(
パイ
)
の
扱
(
あつか
)
へる
時
(
とき
)
ほど
麻雀
(
マージヤン
)
に
快
(
こゝろよ
)
い
陶醉
(
たうすゐ
)
を
感
(
かん
)
じる
時
(
とき
)
はない。
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
汽笛は勤勉ならざる者には堪へがたい
威嚇
(
ゐかく
)
であつた。一日でも骨折を惜んで血税を怠る者を
忽
(
たちま
)
ち
憂欝
(
いううつ
)
にした。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
あの言葉は、忘れ去つてゐた古傷に、さはられたやうな痛さである。赤羽の工兵隊に召集されて、
南京
(
ナンキン
)
攻略に行つた時の、あの
憂欝
(
いううつ
)
な戦争が、
脳裡
(
なうり
)
をかすめた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
▼ もっと見る
憂欝
(
いううつ
)
の色が見えるんですもの、そりや梅子さん貴嬢ばかりぢやない、誰でも、
齢
(
とし
)
と共に苦労も増すに
定
(
きま
)
つて居ますがネ、
只
(
た
)
だ私、貴嬢の色に見ゆる
憂愁
(
いうしう
)
の底には
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「犬の幽霊が野原をああして駆けまはつて居たのだ。さうして、さういふ霊的なものは俺にばかりしか見えないのだ……。」……
憂欝
(
いううつ
)
の世界、
呻吟
(
しんぎん
)
の世界、霊が
彷徨
(
はうくわう
)
する世界。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
彼の後の
襖
(
ふすま
)
が、けたたましく
開放
(
あけはな
)
されなかつたら、さうして「お
祖父
(
ぢい
)
様唯今。」と云ふ声と共に、柔かい小さな手が、彼の
頸
(
くび
)
へ抱きつかなかつたら、彼は恐らくこの
憂欝
(
いううつ
)
な気分の中に
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あの
憂欝
(
いううつ
)
——丑松が以前の快活な性質を失つた証拠は、眼付で解る、歩き方で解る、
談話
(
はなし
)
をする声でも解る。一体、何が
原因
(
もと
)
で、あんなに深く沈んで行くのだらう。とんと銀之助には合点が行かない。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
ふりつづく長い長い
憂欝
(
いううつ
)
の
単音律
(
モノトニー
)
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
二三日
憂欝
(
いううつ
)
な考へに
閉
(
とざ
)
され乍ら、何時八五郎に脅かされるかも分らない心持で、此の報告を待つて居た平次だつたのです。
銭形平次捕物控:150 槍の折れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夜遊びの癖を
矯
(
た
)
めるのも困難だつたが、一度崩れたものを盛り返さうなどと云ふことは、考へるだけでも
憂欝
(
いううつ
)
であつた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
苫小牧
(
とまこまい
)
は製紙工場のあるだけで知られた寂しい町で、夏ながら單調な海岸の眺めも灰色で、何となく
憂欝
(
いううつ
)
だつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
東京を去る時よりも、もつとひどい
憂欝
(
いううつ
)
さで、ゆき子は自分の避難所へ富岡を連れて戻つて来た。
母屋
(
おもや
)
の荒物屋へ帰つた挨拶に行くと、お神さんは厭な顔をしてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
やるせなき肉体の
憂欝
(
いううつ
)
に
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
彼は彼女の
憂欝
(
いううつ
)
な気分を悲しく思つたが、女は自分を如何にして幸福にしようかと悩んでゐる彼を哀んだ。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
さうして彦太郎は、影法師の憑きものに惱まされながら、次第に
憂欝
(
いううつ
)
に絶望的になつて行つたのでせう。
銭形平次捕物控:290 影法師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
どつちを向いても、余り幸福ではない、下の姉や、仏の娘を初めとして、寄つてくる多勢の血縁の人達の生活に触れるのも、私に取つては相当
憂欝
(
いううつ
)
なことであつた。
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
平次はすつかり
憂欝
(
いううつ
)
になりました。
銭形平次捕物控:331 花嫁の幻想
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「床が板でないので、少し
憂欝
(
いううつ
)
ですね。」
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
“憂欝”の意味
《名詞》
憂欝(ゆううつ)
不安や心配で気がふさぐこと。
(出典:Wiktionary)
憂
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
欝
部首:⽊
25画
“憂欝”で始まる語句
憂欝病
憂欝症
憂欝性
憂欝狂
憂欝的