感念かんねん)” の例文
この色彩は画面を洗ひし水桶みずおけの底に沈澱ちんでんしたる絵具を以て塗りたる色の如くむしろ色と呼ばんよりは色なる感念かんねんを誘起せしむる色づきし雲の影とやいはん。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ういふふうで一時間じかんたち二時間じかんつた。どく千萬せんばんなのは親父おやぢさんで、退屈たいくつで/\たまらない。しかしこれも我兒わがこゆゑと感念かんねんしたか如何どうだかしらんが辛棒してそのまゝすわつてた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ある人は手際よく積まれた手足の骨を見て日本のまき屋の前を通る様だと云つた。如何いかにもその様な感じがするに過ぎない。死に対する厳粛げんしゆく感念かんねんなどは勿論おこりさうに無かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
母親はヽおやわかれにかなしきことつくしてはらわたもみるほどきにきしが今日けふおもひはれともかはりて、親切しんせつ勿体もつたいなし、殘念ざんねんなどヽいふ感念かんねん右往左往うわうざわうむねなかまわしてなになにやらゆめ心地こヽち
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)