すく)” の例文
彼のまえにはあご骨のふとい、大きな男がぬうっと立っているのだ。五十ばかりでほとんど表情がない。それが却って、すくめるような凄味。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ぞっと身体がすくんだ。寂しい通りに、軒灯の光りが淡く流れていた。青葉をつけた木の枝が一本落ちてる中に片足を踏み込んでるのだった。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そして相手があつと声を上げて立ちすくむか、あるひは身構をしたときには房一はもうはるか彼方を点のやうに小さく一散に走つてゐるのだつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
捜査一課は、いまのところ寛大ぶって笑っているが、いざとなったら、すくみあがるようなすごい顔を見せるのだろう。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
さらつもりつゝある大粒おほつぶゆききたからなゝめ空間くうかん掻亂かきみだしてんでる。おつぎは少時しばしすくんだ。大粒おほつぶゆきげつゝちる北風きたかぜがごつとさむさをあふつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もしや幽霊かとお菊は又おびえて首をすくめると、女は彼女かれの枕もとへすうと這い寄って来て低声こごえで呼んだ。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
葉子は悪戯いたずらそうに首をすくめながら、電話口を離れて来るのだった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
脱獄囚の虎蔵とらぞうは、深夜の街道の中央まんなかに立ちすくんだ。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼女の足は戸の前まで来るとすくんだ。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
とんだ女をお茶に誘ったもんだ……秋川親子は、つくづくと後悔し、けがらわしい思いですくみあがっているのだろう。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いてえのか」おつぎは目敏めざとくそれをこゝろもとなげにいつた。おつぎはやつれてしづんだ卯平うへいそばると、つひ自分じぶんしづんでしまつてたゞ凝然ぢつすくんだやうにつてるよりほかはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
庄吉は其処に立ちすくんでしまった。
少年の死 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
久美子はすくみあがり、われともなく鋭い叫声をあげた。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)