思浮おもひうか)” の例文
今年ことしもとう/\かれなかつたと、おたがひおもひながらも、それがさしてものなげきでなく、二人ふたりこゝろにはまた來年らいねんこそはといふ希望のぞみ思浮おもひうかんでゐるのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
んなことかんがしたときには、仕方しかたいので——しかし、三千ねんぜん石器時代せききじだい住民じうみんは、今日こんにちまでも生存せいそんして我等われらかたる——とつたやうこと思浮おもひうかべて、しひなみだまぎらすのである。
自分は星斗せいとにぎはしき空をば遠く仰ぎながら、心のうちには今日よりして四十幾日、長い/\船路ふなぢの果によこたはるおそろしい島嶼しまの事を思浮おもひうかべた。自分はどうしてむざ/\巴里パリーを去ることが出来たのであらう。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と、彼女かれはいつも、そのころ自分じぶん樣子やうすやいろ/\こまかい出來できごとまで思浮おもひうかべながらつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
二人ふたりは、そんなはなしをして、つまらなそうにわらつた。そして、なんとなくあきらしいそらのいろと、着物きものはだざわりとにがつくと、やはり二人ふたりえがたいやうに故郷こきやう自然しぜん思浮おもひうかべるのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)