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おもひうか
今年もとう/\
行かれなかつたと、お
互に
思ひながらも、それがさしてものなげきでなく、
二人の
心にはまた
來年こそはといふ
希望が
思浮んでゐるのであつた。
這んな
事を
考へ
出した
時には、
仕方が
無いので——
併し、三千
年前の
石器時代住民は、
今日までも
生存して
我等と
語る——と
云つた
樣な
事を
思浮べて、
強て
涙を
紛らすのである。
自分は
星斗賑しき空をば遠く仰ぎながら、心の
中には今日よりして四十幾日、長い/\
船路の果に
横はる
恐しい
島嶼の事を
思浮べた。自分はどうしてむざ/\
巴里を去ることが出来たのであらう。
と、
彼女はいつも、その
頃の
自分の
樣子やいろ/\こまかい
出來ごとまで
思浮べながら
云つた。
二人は、そんな
話しをして、つまらなそうに
笑つた。そして、なんとなく
秋らしい
空のいろと、
着物の
肌ざわりとに
氣がつくと、やはり
二人は
堪えがたいやうに
故郷の
自然を
思浮べるのであつた。