従者じゅうしゃ)” の例文
座の一隅にはひくい脚を打った大きな折敷おしき柳樽やなぎだる置かれてあった。客が従者じゅうしゃに吊らせて来て此処へおくったものに相違無い。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのいわれのある古戦場こせんじょうで、その信玄のまごが、わずかふたりの従者じゅうしゃとともに、錆刀さびがたなで首を落とされるとは、なんと、あわれにもまた皮肉ひにく因縁いんねんよ!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを如何いかんというに、この時洋中ようちゅう風浪ふうろうあらくして、予がほかに伴いたる従者じゅうしゃは皆昏暈こんうん疲憊ひはいして、一人もつことあたわず。
うまはもちろんれい若月わかつきで、従者じゅうしゃ一人ひとり腰元こしもとほかに、二三にん家来けらいいてったのでございます。
僕の知れる老人に滑稽こっけい趣味にゆたかなものがあった。封建時代には従者じゅうしゃや出入りの者に勝手に新しき名をつけることは普通であったから、この老人もまた種々な名を出入りの者どもにつけた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
肥前ひぜん郷士ごうし浪島五兵衛なみしまごへえともうすもので、二、三人の従者じゅうしゃもつれた、いやしからぬ男でござります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おも城内じょうない馬場ばば稽古けいこしたのですが、のちには乗馬じょうば鎌倉かまくら実家帰さとがえりをしたこともございます。従者じゅうしゃ男子だんしのみではこまりますので、一人ひとり腰元こしもとにも乗馬じょうば稽古けいこいたさせました。
戦場せんじょうのようにこんざつしている桜門さくらもん方角ほうがくから、ひとりの武将ぶしょうがふたりの従者じゅうしゃをつれ、作事奉行さくじぶぎょう筒井伊賀守つついいがのかみ家臣かしん案内あんないにしたがって、こっちへ向かってくるすがたが小さく見える。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)