弓張ゆみはり)” の例文
父は家人の騒ぐのを制して、はかま穿きそれから羽織をた。それから弓張ゆみはりともし、仏壇のまへに据わつて電報をひらいたさうである。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
提灯ちょうちん五張いつはり、それも弓張ゆみはり馬乗うまのりの定紋つきであった。オーバアの紳士、道行を着た年配者、羽織袴のは、外套を脱いで小脇に挟んでいる。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「提灯は、小田原でございますか、ブラでよろしゅうございますか、弓張ゆみはりに致しますか、それともまた別にお好みでも」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
喰積くいつみとかいうような物も一ト通り拵えてくれた。晦日みそかの晩には、店頭みせさきに積み上げた菰冠こもかぶりに弓張ゆみはりともされて、幽暗ほのぐらい新開の町も、この界隈かいわいばかりは明るかった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
幾千の弓張ゆみはり提灯の上を神輿みこし自然ひとりで動くやうに見えて四方に懸けた神鏡しんきやうがきら/\として通つたあと二三十分で祭の街は死んだやうに静かになつて、海の風がを送る。
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
八人の警吏が各々めいめい弓張ゆみはりを照らしつつ中背ちゅうぜいの浴衣掛けの尻端折しりはしおりの男と、浴衣に引掛ひっかけ帯の女の前後左右を囲んで行く跡から四、五十人の自警団が各々提灯ちょうちんを持ってゾロゾロいて行った。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
弓張ゆみはりなざア其方そっちの羽目へ指しねえな、提灯ちょうちんをよ、たれえを伏せて置いて、仏様のわきの下へ手を入れて、ずうッと遣って、盥のきわで早桶を横にするとずうッと足が出る、足を盥の上へ載せて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
心いるかたなりませば弓張ゆみはりの月なき空に迷はましやは
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
こゝに、おみきじよふのに、三寶さんぱうそなへ、たるゑ、毛氈まうせん青竹あをだけらち高張提灯たかはりぢやうちん弓張ゆみはりをおしかさねて、積上つみあげたほど赤々あか/\と、あつくたつてかまはない。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
高張たかはり弓張ゆみはりが門の左右へ、掛渡した酸漿提灯ほおずきぢょうちんも、ぱっと光が増したのである。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)