年長としかさ)” の例文
座敷の中央まんなかが、取片付けられるので、何かと思つたら、年長としかさな芸妓が三人三味線をひかへて入口の方に列んだ。市子が立つて踊が始まる。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
平八は幹太郎より三つ年長としかさの二十五歳で、いちじは掛札三席までいったが、三年まえに右足のすねを骨折してびっこになった。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「いえ、亭主ではございません。女房が従妹同士なのでございます」と、三人のうちで年長としかさの益蔵という男が答えた。
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
年長としかさの二人は、いい加減な顔つきだったが、丹三、鼬、仁太の三人は、将門まさかどが旗上げでもするような気持だった。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後生折つて下されと一むれの中にては年長としかさなるを見かけて頼めば、流石に信如袖ふり切りて行すぎる事もならず、さりとて人の思はくいよ/\らければ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二つか三つ私よりも年長としかさなので、私よりも世の中を知つて居り、私のきたいと思ふことを澤山に話してくれた、彼女と一緒にゐると、私の好奇心は滿足した。
酒にへてか、よろめく足元危く、肩には、古ぼけた縞の毛布ケツトをかけていたが、その姿から見ると、くるま夫ででもあろうか。年は女よりは三つばかり年長としかさに見えた。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「よござんす!」と妖女ウェーヂマの一人が金切声で叫んだ。それは仲間のうちのどいつより、きたない面をしてゐたから、多分、一番年長としかさのやつに違ひないと祖父は考へた。
年長としかさらしいあから顔の侍が、とうとうしびれをきらして、さけびをあげました。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
窓枠に腰を掛けてマンドリンを弄んでゐるのは一番年長としかさの池部だつた。
夜の奇蹟 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
年長としかさな小児らは勢ひ込んで其ならんだ火の上を跳ねてゆく。恰度夕餉ゆふげの済んだところ。赤い着物を着た女児共をんなのこどもは、打連れて太鼓の音をあてにさゞめいて行く。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
後生折つて下されと一むれの中にては年長としかさなるを見かけて頼めば、さすがに信如袖ふり切りてゆきすぎる事もならず、さりとて人の思はくいよいよらければ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三公が、そのはかなき名を見つけ出して笑いこけると、年長としかさの由造が、尤もらしく首を振って
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四人のうちでは一番の年長としかさで、容貌きりょうもまた一番よくない古屋為子が、最も年若で最も容貌の美しい児島亀江と、一緒に湯風呂のなかに沈んだのは、一種の嫉妬か或いは同性の愛か
五色蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ひとり、少し年長としかさらしいのが
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形 (新字新仮名) / 林不忘(著)
其の一人は突然いきなり大きい声を出して、『来た。来た。』と叫んだ。年長としかさの一人はそれを制するらしく見えた。そして一緒に、敵を見付けた斥候のやうに駈けて行つて了つた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
これ此樣こんなうつくしいはなさいてあるに、えだたかくてわたしにはれぬ、のぶさんはせいたかければおとどきましよ、後生ごせうつてくだされと一むれのなかにては年長としかさなるをつけてたのめば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「あなた方は当分御滞在でございますか。」と、その中で年長としかさらしい為子が訊いた。
五色蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
が、其の儘家へ帰るでもなく、年長としかさの子供等は其処此処に立つて何かひそひそ話し合つてゐた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼は梶田弥太郎といって、林之助よりも三つばかり年長としかさであった。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
安藤は告別のことばの中で「三年一万九百日」と誤つて言つた。その女教師は三年の間この学校にゐたつたのだ。それ以来年長としかさの生徒は何時もこの事を言つては、校長を軽蔑する種にしてゐる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その途中で年長としかさの伊丹弥次兵衛がこんなことを言い出した。
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
気が向くと、年長としかさなのをれて、山狩、川狩。自分でいた小鳥網から叉手網さであみ投網、河鰺網かじかあみでも押板でも、其道の道具は皆揃つてゐたもの。鮎の時節が来れば、日に四十から五十位まで掛ける。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)