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巨
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おほき
拙者は
故から此石とは
馴染なので、この石の事なら
詳細く
知て居るのじや、
抑も此石には九十二の
竅がある、其中の
巨な
孔の中には
五の
堂宇がある
櫻か、
海棠かと
思ふ、
巨なつゝじの、
燃立つやうなのを
植て、
十鉢ばかりずらりと
並べた——
紅を
流したやうなのは、
水打つた
石疊に
其の
影が
映つたのである。
此の
山里を、
汽車の
中で、
殆ど
鳥の
聲を
聞かなかつた
彼は、
何故か、
谷筋にあらゆる
小禽の
類が、
此の
巨な
手の
獵人のために
狩盡されるやうな
思ひして、
何となく
悚然とした。
其も
瞬時で。